たとえば今が終わる瞬間に




二週間後、お墓が二つ出来ていた。


「あ痛ェ!」


ナルトが声を上げたのは、供え物のまんじゅうを食おうとして手をはたかれたからである。この無礼者…、お供え物まで食べるとかどんだけ腹減ってんだよ。


「…でもさァカカシ先生」

「ん?」

「…忍者の在り方ってやっぱこの二人が言っていた通りなのかなぁ…」


サクラが聞いた。


「忍ってのは自分の存在理由を求めちゃあいけない…ただ国の道具として存在することが大切。それは木の葉でも同じだよ」

「本物の忍になるって本当にそういうことなのかなぁ…。なんかさ!なんかさ!俺ってばそれやだ!!」

「アンタもそう思うのか?」


サスケが先生に聞く。あんたは無いでしょサスケ…、この人一応僕らの担当上忍なんだから…。


「んー、いやな…だから忍者って奴は皆知らず知らずそのことに悩んで生きてんのさ…再不斬や、あの子のようにな」


常日頃から悩んでんのか…?つーか、暁メンバーは存在価値とかじゃなく犯罪起こして抜け忍だが…その犯罪もやっぱあれなのかな…?存在価値っつーか、そういうのを認めて欲しくてやったのかな…?


「…よし今決めたってばよ!!俺は俺の忍道を行ってやる!!」


ナルトって何かあればこんな事言ってる気がする…ま、いいけどさ。














「お、スザク?何やってんの?」

「傀儡の整備です。整備しないと使い物にならないので」

「道具足りないんじゃないの?」

「ハァ…、まあ、そうですね。足りませんけどある分だけでもやっておこうかと思って。どちらにしろ、この国では手に入りませんから」

「偉い偉い」


ポンポンと頭を撫でられてかぁっと頬が熱くなる。ぐっと心臓を鷲掴みされたみたいになって苦しくなって…、うう…。


「ハハ、顔赤いよ?お前。風邪でも引いた?」

「違います、馬鹿にしないで下さい。まだ怪我癒えてない癖に」


ドスッと怪我の部分を小突けば先生は眉を顰めて"何すんの、お前"と恨めしそうに此方を見てくる。ハァ…と溜息をつくと同時に先生の体を押し倒し其の横に座った。


「寝ててくださいね。失敗とかはないですけど、集中できないんで」


そっと怪我の部分に手を沿えるとブゥン…という音と共に翡翠色をしたチャクラが怪我を包んでいく。


「(医療忍術…!傀儡だけじゃなく医療忍術も使えたのか…)」

「先生、もう痛くないで…、っ」

「?、どうした?」

「っ、な、んでも………」


こちらを見る先生の瞳が嫌に記憶に残っている。冷たかった、犯罪者を見るのと同じ目だった。そうだ、僕は………暁で、S級犯罪者じゃないか…。何を忘れていたんだろう、何を思っていたんだろう。そっと伸ばされた腕が僕の頭を撫でた。


「…、…」

「ハァ…泣くな、泣くな。ほら、笑え」

「泣いて、ません…!」


頭の上に置かれた手と、瞳の冷たさが比例して…訳が分からなくなった。


「わー、快晴だ」


あれから数日、タズナさん達の作っていた橋も完成し、ついに波の国から木の葉へ帰る日が来た。橋も完成、今日は快晴、いい事続きだ。


「おかげで橋は無事完成したが…超さみしくなるのォ…」


タズナさん達が町人が見送りに来てくれていた。忙しいだろうに…。


「お世話になりました」

「まあ!まあ!タズナのオッチャン。また遊びに来るってばよ!」


ナルトが嬉しそうに見える。まあ、実際ちょっと嬉しいんだろうな。


「…絶対…か…」


イナリが泣きそうな顔で泣きそうになりながらナルトの言葉に返す。此れ、泣くね、きっと。


「イナリィ…お前ってばさみしいんだろー!泣いたっていいってばよォ!ほら、カイアもいつか言ってたろ?餓鬼は泣くのが仕事だって!」


…とか、偉そうに言うナルトも泣きそうだけどね!?


「泣くもんかァ!!ナルトの兄ちゃんこそ泣いたっていいぞ!!兄ちゃんだってまだ餓鬼なんだからな!泣くのが仕事なんだろ!?」


おい、おまえ等仕事仕事ってうるせー!!間違えた僕が恥ずかしくなってきたじゃないか!


「あっ…そう…じゃあな…」


ナルトが帰ろうとする。するとイナリは泣き出し、ナルトもまた泣き出す。うーわー…さっさと泣けば良かったのに。


「よーし!早く帰ってイルカ先生に任務終了祝いのラーメンおごってもらおーぜ!それにさ!それにさ!木の葉丸にも俺の武勇伝きかせてやろー!!」

「じゃ私は…。ね!サスケ君!里に帰ったらデートしない?」

「いや断る」

「そ…そんなぁ…」

「あのさ!あのさ!俺ってばいいよ!」

「うるさい!黙れ!ナルト!」

「じゃあ、僕とデートしようよナルト!!」

「「「「はあ!?」」」」

「なんで僕だけそんな反応!?」

「お前ってばさ!お前ってばさ!そんなキャラじゃないだろ!?」

「はぁ?」

「そ、そうよ!!キャラは!?」

「え、キャラって…デート、だめ?」

「べ、別にそうじゃないってばよ!?で、でもさ…。んーじゃあラーメン食いに行くってばよ!!」

「それデートって言いませーん。そーだ、せーんせ。先生で良いからデートしよ!」

「はいダメー」

「けちー!!グラマーが良いってか!?小南姉が良いってか!?っちぇ!小南姉とスザクと並ぶといつも僕だけ余り物だ。ちくしょー!男なんて胸がでかけりゃ誰でも良いんだー!!」

「「「はあ!?」」」

「そ、そうなんだ…」


サクラとガシッと手を合わせギロッと男子+先生を睨む。


「「今後一切近寄らないでください…。あ、サスケ(サスケくん)以外で」」

「何でサスケは良いのよ!?」

「そうだってばよ!」

「えー、だってサスケくんはそーゆー事に興味なさそうだし」

「そうそう。胸で判断するとかさいてー」


きゃーっとサクラと一緒に橋を走り出した。それを"おいコラァ!"と追ってくる先生とナルト。そして、呆れたように溜息を吐いて後を付いてくるサスケ。何だか、今の時間が凄く楽しかった。長く続かないことなど、承知の上の楽しさで…それが何だかきゅっと胸を締め付けたけど、知らない振りをする事にする。この気持ちを認めたら、何かが終わる気がしたから………。


たとえば"今"が終わる瞬間に


きっと、僕は立ち直れなくなってしまうから。




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