その日君が言ったたった一つの願い事
3年ほど前
「ポチー!!」
イナリとその男は出会った。
「違う!!こいつの名前はシューティング・スター…今日から俺の犬だ!!」
ガキ大将らしき少年が子犬を脇に抱えて言った。
「シューティング・スターじゃない!!ボクのポチだー!!返せっ!!ポチはボクの友達なんだ!だれがお前なんかにやるもんかぁー!!」
自分より少し大きい少年二人に抑えられたその男の子(イナリ)は叫ぶがその男の子の言葉にイラついたガキ大将らしき少年は"ウルセー!!"と抱えていた子犬をすぐそばの海に捨てる。
「ポチー!!」
子犬は溺れないように必死にもがくが無意味だった。
「へへっ…お前が大人しく渡さないからだぜ。もうあんな犬どうでもいいさ!おい!!イナリを放してやれ!」
ガキ大将らしき少年が命令すると二人の少年はイナリと呼ばれた男の子を放した。
「なっ…なんてことすんだ!ポチを殺す気かー!!」
「へッ!!お前の大切な犬っころなんだろ。助けてやれよ、早く!!」
「ぐっ…」
少年は泳ぎが苦手だったらしく黙ってしまう。助けたいが、泳げない、どうしよう、イナリの中で様々な感情が渦巻く。
「どーしたよ。ほら…ポチが死んでもいいのかよ!!」
しかしイナリは動かない否、動けないのだった。だが、イナリはガキ大将らしき少年に突き飛ばされてしまい海に落ちるが少年三人が助ける気配は無く、犬も犬かきをして自力で助かってしまう。…そして、イナリはそのまま意識を手放し溺れた。
「う……」
イナリが目を覚ますとそこは海の中ではなく男が魚を焼いていた。
「気がついたかボウズ…」
溺れたイナリを助けたのはこの男は名"カイザ"と言うらしく国外から夢を求めてこの島に来た漁師だった。イナリはカイザの言葉に心を打たれ、彼になつくようになり父親のいなかったイナリは彼を本当の父親のように慕っていく。…そして、そんなカイザが家族の一員になるにそう時間はかからなかった。カイザはイナリだけではなく、町にも必要とされている男になっていく。そんな、ある日の事だった。この町に大雨が降りはじめ、川が氾濫。だが、この川に入り水を塞き止めねばと町の一部が水に浸かってしまう…そんな危機の中立ちあがったのがカイザだった。カイザが自ら行くといい、町の人達は危険だと言って止めるがカイザはそんな言葉を押し切って激流の中へ命がけで入っていく。カイザは無事川を塞き止め生還した。おかげで町は助かり一件落着………カイザは町の"英雄"となる。だが、その後がいけなかった。
ガトーがこの国に来てしまったのだ。
カイザはガトーにあることないこと言われ、この国の秩序を乱した者として公開処刑されてしまったらしい。
「それ以来イナリは変わってしまった…そしてツナミも…町民も…」
なるほど…。
ガタ
ナルトが急に立ち上がり歩き出した。しかしボロボロだったため倒れてしまう。
「…修行なら今日はもうやめとけ。チャクラの練りすぎだ。これ以上動くと死ぬぞ」
カカシさんが忠告するがナルトは立ち上がり言うのだった。
「証明してやる…」
「?」
「何を?」
「この俺が…この世に英雄がいるってことを証明してやる!!」
ナルトは外へ出かけていった。その日からナルトは毎晩一人で木に登り始めるようになる。修行開始から6日目の朝の事………
「ナルトの奴昨夜も帰って来んかったのか?」
「おじさんの話聞いてから毎晩一人で木に登ってるわよ」
"単純バカだから"とサクラが言った。"さらにはチャクラの使いすぎで死んでたりして!"とも。んー…暁的にはその展開困るなぁ…。
「…ナルト君大丈夫かしら。子供が一人真夜中じゅう外にいるなんて」
「なーに心配いりませんよ。ああ見えてもアイツはいっぱしの忍者ですから」
その後サスケが見てくると言って出ていった。きっと自分も参加する気だ。はぁ…男って理解できない…。それからも時は進み続け、修行開始7日目の朝になった。僕は昨日からサクラと共に泳ぐ練習をしている。昨日は何とか潜れるようになったので、今日は泳ぐ練習である。
「カイア!!泳げるようになったみたいね!」
岸の方から声がした。今いるところは岸から離れた50mくらいで、どのくらい深いのかはチャクラを浮くために安定させてるだけだから…分からない。そして、サクラの後ろには先生がいて"上がってこーい"と手を振っている。
「…はー…うわっ、げほ…!」
油断した…!水の上に立つためだったり気を登るためだったり傀儡を操ったりする時のチャクラコントロールは良いんだけどまだ浮ける様になって間も無いしコントロールをちょっと謝ればどぼん、…ぽくぽくぽくちーんの世界だ。足にチャクラを集中させて足をばたばたさせ何とか浅い所にやってくる。
「…げほっ…ごほ…!」
砂浜にたどり着くなり倒れ空を見上げる。
「水嫌い…」
「ま、頑張れ」
「そうよ!!頑張るしかないんだから」
分かってるよ、そんな事…。ブツブツと文句を言いながら着替えてサクラ達に合流するとナルトとサスケの修行を見に行くというので着いて行った。あ、そう言えば小南姉たちは木の葉のマンションとアジトにそれぞれ戻るとかで帰って行った。因みに、メンドクサイなーとか垂直な感じが気持ち悪いなーとか思ってた木登りもやってみると楽しかった。頂上まで登った時になんか達成感!!そして、そんな時に聞こえてきた声に"うわっ!"となって足元が離れ…あ、今絶対S級犯罪者としての威厳無いわ…これ。
「…あ、やっぱこーなるの…の、のわぁ…!!」
傀儡出して受け止めてもらう…!?
「無理無理!よく考えたら色々無理!ああ、もう!」
落ちても怪我が最小で済むように受身を取ったのに
「大丈夫か?」
先生の腕の中に居た。あ、う、わ…すっぽり収まっちゃってるんですけど…僕どれだけ小さいんだ…!っていうか、なんか、近い…!!し、それになんか顔あっつい?!あ、あれっ、変だな…。
「!!!、不整脈!?」
「は?急にどうしたの、お前」
「先生僕病気かも知れない!」
「はぁ?」
「わあああ!!!」
「ちょ、そっちは…!」
「ぎゃっ!」
ドボン!!!
「言わんこっちゃない…」
溺れかけた僕を助けたのは先生である。うう、恥ずかしい…。其の晩、タズナさん宅で夕飯を食っている時の事、あれからずっと木に登り続けたナルトとサスケがどろどろの状態で帰って来て何処まで登れるようになったかと言うと二人ともようやく木のてっぺんまで登れるようになったらしい。
「よし!ナルト、サスケ。明日からお前らもタズナさんの護衛につけ。カイアもな」
"はい"と返事を返し、食器を台所へ持って行く。
「フー。ワシも今日は橋作りでドロドロのバテバテじゃ。なんせもう少しで橋も完成じゃからな」
「ナルト君も父さんもあまり無茶しないでね!」
「うー」
「うむ」
こういう時の返事って大抵はあてにならないんだよねぇ。昔、リーダーに"怪我しちゃ嫌だよ!"って言って送り出しても掠り傷1つくらいつけて帰ってきたし。
(いや、ソレは許してよ!?てか、付けたのは小南ちゃんだし!?byペイン)
「ぅ…」
その時…突然、イナリが泣き始めた。え、ちょ…僕泣きやませ方とか知らない!!ナルトもそれに気付いらしく声をかける。
「何だァ?」
「なんでそんなになるまで必死に頑張るんだよ!!修行なんかしたってガトーの手下には敵いっこないんだよ!いくらカッコイイこと言って努力したって本当に強いヤツの前じゃ弱いヤツはやられちゃうんだ!」
イナリの叫びで周りが静かになった。
「うるせーなァお前とは違うんだってばよ」
「お前みてるとムカツクんだ!この国のことも何も知らないくせに出しゃばりやがって!」
へえ、ナルト見てると、ね…。
「お前にボクの何が分かるんだ!つらいことなんか何も知らないでいつも楽しそうにヘラヘラやってるお前とは違うんだよォ!」
「…だから…悲劇の主人公気取ってビービー泣いてりゃいいってか。お前みたいなバカはずっと泣いてろ!泣き虫ヤローが!!」
イナリはその言葉に黙りこんだ。
「ナルト!アンタちょっと言い過ぎよ!」
「フン!」
サクラに言われてもナルトは謝りはしなかったが………
「あー、黙ったところ悪いけど僕も言って良い?」
「カイアまで!!やめなさいよ!!」
「泣いてると…損だけ。それだけは幼い頃から知ってるよ」
「え…?」
笑って言うとイナリは顔を上げて僕の顔をジッと見た。
『泣いてもなにも起こらない。父さんや仲間が怪我してもその度に泣くだけじゃ体の傷は癒えないだろ?だから、泣かずにそれに立ち向かう…っつても、傷の手当てしてやるだけだけど。それだけが幼い僕に出来た幼い時の貢献方法。今は一緒に戦える。仲間のためだったから出来た事もある。だから、お前にも町の人のため家族のため出来る事があるはずだろ?以上、僕からの言葉でした。あーやば…っ。やっぱこーゆーの向いてない…。恥ずかしー…っ。でも、泣いてばっかでもいいぞ?ガキは泣け!思いっきりね!子供の仕事は泣くことさー」
「ソレって赤ん坊よ…?」
「…」
そのサクラの言葉に何も言わずに外に出た。あー、間違えた…!!恥ずかしい。翌日、僕等は護衛のため今からでかける事になった。ナルトは熟睡中=置いてくぜ!!な方程式が出来上がる。
「じゃ超行ってくる」
「ハイ」
何事もなく目的の橋についたがその光景に全員驚いた。
「な…なんだあコレはァ!!!」
タズナと一緒にいままで橋作りをしてきた(であろう)人たちが全員倒れていたのだ。い、一体何が…?
「いったい何があったんじゃ!」
「ば…化け物…」
周りを見ると、霧が濃かった。なんか、この霧見た事あるんだけど…。
(霧なんて何処も一緒じゃないか?うん?byデイダラ)
「来るぞォ!!」
先生の言葉で僕等はタズナを守るように囲み、戦闘態勢をとった。
「ね!カカシ先生これって…これってあいつの霧隠れの術よね!」
サクラの言葉に先生は無言で頷いた。お、やっぱり。どっかで見た霧だと思ったんだよね。
「久しぶりだなカカシ」
再不斬の声がしたのに本人の姿は見えなかった。多分、霧隠れの術で隠れているんだろう。
「相変わらずそんなガキを連れて…また震えてるじゃないか…かわいそうに…」
再不斬の声が言い終わると同時に分身した再不斬が僕等を囲んでいたのだった…が、全員サスケが数秒で片付けてしまった。
「ホー水分身を見切ったか。あのガキかなり成長したな…」
再不斬の言う通りだった。サスケは前よりまた強くなっていたのだ。
「強敵出現ってとこだな…白」
「そうみたいですね」
再不斬の隣にいるのは、前に再不斬と戦った時に『霧隠れの追い忍』とか言っていた麺の子だろう、見た事ないから知らないけど。
「どうやら俺の予想的中しちゃったみたいね…あのお面ちゃん…どう見たって再不漸の仲間でしょ!一緒に並んじゃって…」
「どの面下げて堂々と出て来ちゃってんのよアイツ」
サクラが怖いのは気のせい…?
「アイツは俺がやる」
仮面のヤツの相手をサスケが立候補した。理由は"ヘタな芝居しやがって…オレはああいう"スカしたガキ"が一番嫌いだ"らしい。僕はサスケも"ソレ"だと思うんだけど…気のせい?
「カッコイイサスケ君v」
「(サスケにはつっこまないんだよなァ…サクラの奴)」
「大した少年ですね。いくら水分身がオリジナルの10分の1程度の力しかないにしても…あそこまでやるとは」
「だが先手は打った行け!」
「ハイ」
仮面は瞬時にサスケを攻撃するがサスケは仮面の攻撃をクナイで受け止めた。攻撃は結構速かったが止めるとは流石だ…。
「サクラ、タズナさんを守るぞ」
「うん!」
対峙しているサスケと仮面を見ながらタズナを守るため気を張っていた。サスケと仮面の攻防が続く中仮面と互角のように戦えるようになったサスケはやっぱり強くなっている。修行の効果もあったようで続いていた攻防はサスケのスピードが上回っていた。
「ぐっ」
「どうやらスピードはオレの方が上みたいだな…」
「ガキだガキだとウチのチームをなめてもらっちゃあ困るねぇ…こう見えてもサスケは木の葉の里のNO.1ルーキー。ここにいるサクラは里一番の切れ者。もう一人は目立ちたがり屋で意外性NO.1のドタバタ忍者ナルト。そして、不思議性&柔軟性NO.1カイア!!」
不思議性って何?!
「ククク…ククククッ…」
「?」
突然、再不斬が笑い出した。
「白…分かるか。このままじゃ返り討ちだぞ」
「ええ…残念です」
白と呼ばれた仮面からいままでとは違う何かを感じる。白が印を結んだが見た事の無い印だった。
「秘術・魔鏡氷晶!!」
サスケの周りを氷の鏡が取り囲み白は氷の鏡の"中"にすっ…と入っていき他の鏡にも白の姿が映った。な、なに、あの術…?
「くそっ!」
先生がサスケのもとへ行こうとするが、再不斬によって止められ行けなかった。
「ぐああああ」
サスケの声が聞こえた。本当なら助けてやりたいがサクラ一人にここを任せるのは危なすぎる…!
「…っ(私…カイアの足手纏いになってる…。カカシ先生は再不漸を相手してるから私を助けるのは無理だと思う…。カイアは私だけじゃタズナさんを守れないと思ってるはず…。情けない…。私、カイアとサスケくんの足手纏いじゃない…っ)」
「………サクラ?」
「!、何?」
「…あのさ…サクラがサスケのとこ行ってこい」
「な、何でよ!?私が行くよりあんたが行ったほうが…ッ」
「行けるか!?お前にタズナさんが守れるか!?再不漸からお前がタズナさんを守れるか!?」
「っ…守れるわよ!あんたに足手まとい扱いされるのは嫌よ!!!」
「…ッ」
「あ…」
「…足手纏い、って思ってないけど…サクラに仮面の相手が出来ても再不漸は難しいからコレが妥当だと思ったんだが…。サクラが嫌なら別に良い…」
「…あんたが行きなさいよ」
「え…。だから…!!」
「カイアが行きなさいよ!!!私よりカイアが行った方が早く倒せて私とタズナさんが危ない時は助けてくれるでしょ?」
「…(この人はなんで僕に絶対敵信頼を寄せるの?僕は敵だよ…?知らないだろうけど僕は君を裏切るよ?それでも良いと言えるの?それはどうして?僕をそんなに頼って良いの?)」
「ねえ、カイア…。早くサスケくんを…っ。カイアなら助けられるでしょ?そして、私達も守ってくれる…。これが重荷になっても…」
「っ…ぁあ、分かったよ…」
ダッ…と走り出した。体と心は案外一緒に動かなくても大丈夫みたいだ。
「っ」
どうしてそんなに信頼するの?僕は暁で裏切るかもしれないのに。何でそんなに僕に微笑みかけるの?何でそんなに辛そうなの?何でそんなに仲間を信じるの?何でそんなに人を信じられるの?何でそんなに…幸せそうなの?何でそんなに僕を痛めつけるの?何でそんなに…僕を苦しめるのですか…?
「…これでどうだ!」
試しに外側から鏡に向かってクナイを投げてみるが、僕のクナイは鏡から出てきた白に防がれてしまった。…だが、どこからともなく飛んできた手裏剣に白は当たる。
「…誰だ」
「うずまきナルト!ただいま見参!!」
意外性NO.1のドタバタ忍者うずまきナルト、本人であった。やっと起きたのね、お寝坊さん。
「俺が来たからにはもう大丈夫だってばよ!物語の主人公ってのは大体こーゆーパターンで出て来てあっちゅーまにィー敵をやっつけるのだァー!」
その時再不漸がナルトに向かって手裏剣を投げた。
「!、ナルト!!」
あーあ、情がうつってきてるな、僕……駄目だ、これ。だが、ナルトに当たる前に再不斬の手裏剣を千本が止めた。
「「「「「!?」」」」」
「白…どういうつもりだ」
「…再不斬さん。この子はボクに…。この戦いはボクの流儀でやらせて下さい」
千本を投げたのは白だったらしくナルトと自分の流儀でやらせろ、と再不漸に言う。
「手を出すなってことか…白。相変わらず甘いヤローだ…お前は」
ナルトも来たがこの状況が悪化しなければそれでいい…。見たことない術だし…秘術だったっけ??えっと…秘術ってえーと…んーと…?で、でも!!どう考えてもこのたくさんある鏡に何かあるって事は間違いない!!
(秘術が分からなくて逃げたな…byイタチ)
「さて、と…」
毒を塗ったクナイ100本ほど投げれたら絶対当たるんだろうな…一本くらいは。多分サスケも思っているはずだ…、とりあえず、外と中から攻撃して見るしかない、と。
「ん?いや、でも…なぁ…」
でも、その方法じゃ橋を壊しかねないし…。ゼツならにょきっと橋に出てこられるのだろうか…?いや、やっぱり見たくないからやめておこう
(わー、酷いなー。オイ、ソレドウイウ意味ダヨbyゼツ)
「…あー…。皆さん後は頑張ってクダサイネ」
「は!?何言ってるんだってばよ!?」
「んー、ちょっと…ね?」
タンッ…地面を蹴って橋から海の上へ移動した。
「あの餓鬼は泳げないんだろう?ふんっ…自殺か?」
「あの子は優秀だからね。何考えてるか分かんないのよ。この俺でさえも、ね」
足にチャクラを集中させ水面に立った。橋の下まで歩いていくとこっから上に跳んで床突き破って再不斬に攻撃出来るだろうが橋の建築事業に影響が出る。とりあえず橋が出来ていない方に走ってみると、そこには一艘の小船があった。ふーん…再不斬達はこっから橋にあがってタズナさんの橋作りの仲間を倒したって事かな?
「よいしょ…」
一応陸地にあがり森を探索して見る事にした。
(お前任務どうした!?うん!?byデイダラ)
「はぁ〜…」
なんつーか、白とか再不斬とか実際興味ないしさー…あいつ等はカカシ班3人のレベルUpに貢献してもらおうかと思うんだけど=僕が参加したら意味が無い!
「お、雪兎…」
そこにいたのは最初再不斬と会った時に見たのとは色の違う茶色の雪兎。こっちが正当だよね。
「ほーら、おいで」
座って手を差し伸べると首を傾げてこちらへやってくる。ポケットを漁っているとにんじんビスケットが出てきた。何で持ってるんだっけ…?てか、兎にコレやって良いのかな…?ちょーっとだけ手に乗せてやると兎はくんくん、と鼻で匂いを嗅いで食べた。
「おお…!」
「おーっと、お嬢ちゃん。ここらへんは危ないぜ?なんせ、盗賊が一杯出るから、なッ!!」
「うるさい」
キッと軽く殺気をこめて睨んでやれば少しうろたえ後退した男。背後を振り返れば50人くらいの集団が僕の背後に立っていた。何だろ、この人たち…。
「…ハァ…」
そのおかげで兎は逃げてしまうし散々だ。
「兄貴ぃ!ガトーの言った橋までもう少しなんですぜ?早く行きましょうや!」
「…ガトー?」
あれ、ガトー?ガトーって再不斬の……。
「ああ、そうだったなァ。役立たずの忍を殺すんだろ?アーヒャヒャハ!!楽しみだなァ」
「!!」
役立たず…?自分のために働いてくれた忍を殺すのか?そっか…ガトーは…再不斬を見限ったのか。
「おい、待てよ。戦う理由が出来た。橋に行きたいなら僕を倒してからいけよ」
傀儡を2体出して挑発すると気が短い奴等だったようで殴りかかってきた。チャクラ糸を操り傀儡と一緒に動きながら戦う。掠ったのをただの傷だと見なした者は全員毒にやられて倒れていく。遅効性の毒だからな…、残念でした。49人ほどが地に伏せると親分格らしき奴が背もたれにしていた木から動き出し自分の武器であろう大剣(多分鬼鮫の鮫肌と同じくらいの大きさ)を手にとって挑んでくる。
「俺等は金を貰うためならどんな殺しでもやる!じゃねェと死ぬんでな!」
親分は案外早くて掠り傷どころか傷一つつけられない。あー、イタチ思い出して腹立つー…!傀儡2体をしまい人傀儡を出す。先生と同じの髪色をした傀儡、普通なら黒髪が良いんだろうが銀髪にした。だってさ………
「黒の針金って作るのめんどーじゃん」
グサッ…と親分の腹に人傀儡の髪の毛が刺さった。
「悪いね。この傀儡の髪の毛はさ、針金なんだ。しかも、超硬いやつ。だから、チャクラ糸で髪の毛を纏めて前に突き出せば刺さっちゃうわけ」
「ぐぅ…、は…っ」
ピチャッと地面に血溜まりが出来た。
「あ、殺しちゃだめなんだったわ…。でも、部下さん達の毒は痺れるだけだからもう最初に傷作った人は痺れとれるはずなんだけど…。だから、病院じゃなくても良いから治療してやってねー。以上!橋に来たら本当に殺すぞ」
殺気をぶつけてやるとヒッ…と言って全員コクコク頷いたので、"来るな"よと念を押し、橋へ戻る。すると、"おーおーハデにやられてェ…がっかりだよ"という声が聞こえた。
「「「!」」」
「?」
「再不斬」
…変なおじさん…というよりデコハゲのおじさんがいた。誰?
「ガトー。どうしてお前がここに来る…それに何だ、その部下どもは!?」
「!、ガトー?」
"あれが?"と聞けばコクコクと先生に頷かれた。こいつがさっきの山賊を雇った男……。
「ククク…少々作戦が変わってねェ…と言うよりは初めからこうするつもりだったんだが。再不斬、お前にはここで死んでもらうんだ」
「何だと?」
「お前に金を支払うつもりなんて初めから毛頭ないからねェ…」
「先生、あれなんて言うんですか?デコッパゲ?」
「…カイアあのな…。あーゆーのをコンプレックスにしてる奴もいるの。大声でハゲー!とかデコッパゲー!とかいっちゃいけないの。分かった?」
「はい!クソハゲ!とか名前ガトーのくせに全然美味しそうじゃない悪役のハゲ!とか言いません!」
「よし、よく言った」
「お前等気付いてねーと思ってんのか!?…正規の忍を里から雇えばやたらと金がかかる上、裏切れば面倒だ…そこでだ。あとあと処理しやすいお前たちのような抜け忍をわざわざ雇ったのだ。他流忍者同士の射合いで弱ったところを数でもろとも攻め殺す。金のかからんいい手だろう?」
金金、ってうるさいな、この人!
「ま一つだけ作戦ミスがあったとすればお前だ…再不斬。霧隠れの鬼人が聞いてあきれるわ。私から言わせりゃあなんだ…クク、ただのかわいい…“小鬼ちゃん”ってとこだなァ」
「カカシ…すまないな。闘いはここまでだ。俺にタズナを狙う理由がなくなった以上、お前と闘う理由がなくなったわけだ」
「ああ…そうだな」
再不斬とカカシさんが言った。
「…そういえば」
ガトーが偉そうに杖をつきながら歩くのを見てイラッと来たのは僕だけだろうか?横たわっている白の側まで来ると、その足は止まった。あれ?何で倒れてんの?あ、死んでる?え、死んでる!?
「こいつにはカリがあった。私の腕を折れるまで握ってくれたねェ…」
ガトーは片足を上げ、その足で白を強く踏みつけた。
「くっ、死んじゃってるよコイツ」
「てめー!なにやってんだってばよォコラァ!!」
ナルトが怒鳴り、ガトーに殴りかかろうと走りだすが僕がナルトの腕を引っ張って止めた…恨めしそうに睨まれた。そして、ナルトは再不漸に向かって怒鳴るように叫ぶ。
「お前もなんとか言えよ!仲間だったんだろ!!」
「だまれ小僧。白はもう死んだんだ」
「なっ…あんなことされて何とも思わねェのかよォ!!お前ってばずっと一緒だったんだろ!!」
「…ガトーも俺を利用したように俺も白を利用しただけのことだ…言ったはずだ。忍の世界には利用する人間と利用される人間のどちらかしかいない。俺達忍はただの道具だ。俺が欲しかったのはあいつの血であいつ自身じゃない。未練はない」
「お前ってば…本気でそう言ってんのか」
再不斬はすぐには答えずナルトは僕を突き飛ばす。よろけた体は先生によって受け止められた。
「やめろナルト!もうこいつと争う必要はない…それに…」
「うるせェー!!俺の敵はまだこいつだァ!!!」
再不斬に指を指して言うのだ。
「あいつは…あいつはお前のことがホントに好きだったんだぞ!!」
どくんっと心臓がはねた。
「あんなに大好きだったんだぞ!!それなのにホントに何とも思わねーのかァ!!」
再不斬は今もなお黙っておりナルトの目には薄っすら涙が浮かんでいた。
「ホントに…ホントにお前は何とも思わねーのかよォ!!?」
再不斬はまだ沈黙…ナルトの目にどんどん涙がたまっていく。
「あいつはお前の為に命を捨てたんだぞ!!」
再不斬はまだ黙っておりナルトの目から涙が零れ落ちた。
「自分の夢も見れねーで…道具として死ぬなんて…そんなの…つらすぎるってばよォ…」
再不斬がようやく、喋った。
「…小僧」
こちらを振り向いた再不斬の目には、ナルトと同じく、涙…。
「…それ以上は…何も言うな…」
ナルトの怒鳴り声が止まった
「小僧。白は…あいつはオレだけじゃない。お前らのためにも心を痛めながら闘っていた…オレには分かる」
再不斬は口元を覆っていた包帯を噛み千切り始めた。
「あいつは優しすぎた。…最後にお前らとやれて良かった…そう…小僧結局はお前の言う通りだった」
「…え?」
「忍も人間だ…感情のない道具にはなれないのかもな…。オレの負けだ」
包帯が橋に落ちた。
「小僧、クナイを貸せ!」
「!?、え…あ、うん」
再不漸はナルトが投げたクナイを口で受け取り、ガトーへ走り出す。
「なっ…もういい!お前らあいつらをやってしまえ!!まかせたぞ!!」
「オォ!!」
そして、それに恐れをなしたのかガトーが後ろの群れの中へ逃げた。逃げるなんて卑怯な奴だなぁ…、自分で向かってきておいて。
「この人数を相手に深手を負った忍者が一人で勝てると思ってんの…」
再不斬の殺気に怯んだからだろう、最後まで言い切る事は出来なかったようだ。何本も体に武器が刺さるが、ただガトーへと進む再不斬。
「そ…そんなに仲間のもとへ行きたいなら…お前一人で行け…」
「あいにくだが…俺は白と同じ…ところへ行くつもりは…ねぇ…」
「な、なんだと…強がりおって…」
「てめーは…俺と一緒に…"地獄"へ…行くんだよォ!!大したことねェ…霧隠れの鬼人も…死んで地獄なら本物の鬼になれるぜ…」
「ひいいっ」
ガトーは再不漸に大口を叩いていたくせに今となっては怯えている。
「楽しみにしとけ!小鬼ちゃんかどうか地獄でたっぷり確かめさせてやるよォ!!」
再不斬はクナイでガトーの首を刎ねたのだった…。そして…ガトーの首が数回地面にぶつかりながら転がり川の中へと落ちて行った。ガトーの部下は完全に再不斬に怯えている。その時、再不斬の口からクナイは落ち…後を追うように再不斬の体は倒れた。
「目を背けるな。必死に生きた男の最期だ」
「…うん」
カカシさんの言葉にナルトは返事をした時―――…
「ナルトォーッ!!サスケくんは無事よォ!!ちゃんと生きてるわァ!!」
サクラの声が聞こえた…けど
「サスケって死んでたのか!?はぁ!?ちょ、ええ!?」
「落ち着け、カイア。ずっと気にかかってはいたんだが…サスケも無事か。…良かった」
皆が安心したところで、さっきの群れが叫んだ。
「オイオイオイ…お前ら安心しすぎ!!」
「!!」
「クソ忍者どもめ…せっかくの金づるを殺してくれちゃって…!!」
「お前らもう死んだよ!」
「こーなったら、俺ら的には町を襲って、金目のものぜ〜んぶ頂いていくしかねーっつーの!!」
「そうそう!」
「Let's Begin!!」
最後のはあ?となる言葉を合図に、部下共が襲い掛かってきた。
「くっマズイな」
「そうだってばよォ!!」
「無理だ!雷切に口寄せに写輪眼…チャクラを使いすぎた!」
後ろの方から矢が飛んできて何かと思い後ろを振り返ると………え、なんかいる…。
「それ以上この島に近づく輩は…島の全町民の全勢力をもって!!生かしちゃおけねェッ!!」
町民……!、そうか、アイツが…。タズナさんの孫イナリを見つけた。もちろん、イナリの母親も。
「…イナリ…お前達…」
「イナリィ!!」
「へへッヒーローってのは遅れて登場するもんだからね!!」
この言葉をきっかけになのか不明だがナルトも加勢。影分身で数を増やすと向こうも怯み、先生も影分身をするのでまた怯む。あんまり同じ人がいるのも気持ち悪いものである。数には限度があると思います先生。
「さーあ…やるかァ!?」
「ふ、ふはははは!!」
敵が笑い出した。
「お前等の敵は俺等の何倍もの戦力だぜ!?橋を渡った森の中に住んでる盗賊がいてなァ!そいつ等も仲間なんだわ」
「あれ?盗賊ってどっかで…。あー!!」
「な、何だってばよカイア」
「そいつ等ボコボコにしたわ。今頃親分の手当てでもしてる部下が見られると思うけど?」
「お前、森に行って何やってたの?」
先生に聞かれたから答える。
「え、雪兎と戯れてた」
言った瞬間、先生の影分身一人とナルトの影分身一人にガクガクと揺さ振られた。あばばばば…!
「こちとら命駆けて戦ってたのにお前は暢気に遊んでたのかよォ!?」
「カイア…。お前帰ったら火影様のとこな!」
「は、はははははなっせぇ…ひははんは!!(舌噛んだ!!)」
「た、倒され…っ」
ソレを聞いた瞬間敵は逃げていった。数人川の中に落ちてたけどね。
「…終わったみたいだな…カカシ」
倒れていた再不斬が弱弱しく喋る。
「カカシ…頼みがある」
「…何だ」
「…あいつの…顔が見てェんだ」
あいつというのは、もちろん白だろう…。"ああ…"と返事をした先生が再不斬を運んでいると、雪が降り始めた。
「こんな時期に雪が…?」
町民の一人が呟く。まあ、普通じゃありえない事だけど、ま、いっか。白と再不斬が並んで横に寝た状態になる。
「…悪いな…カカシ」
再不斬は先生に一言言うと、隣の白に顔を向ける。
「…できるなら…お前と同じ所に…行きてェなあ……俺も」
再不斬はそっと白の頬に手を添え―――亡くなった。
「…コイツ…雪のたくさん降る村で生まれたんだ…」
ナルトがくしゃくしゃの顔で言うのに対し先生は言った。
「そうか…雪のように真っ白な少年だったな」
先生が言うと、一粒の雪が白の目尻に落ち、雪は溶けて水になり、白の目から流れ落ちたのだった。…まるで白が泣いているように…。
その日君が言ったたった一つの願い事
死した魂は天地どちらへ行くのだろうか
あるいは、何処にも、行かないのか―――…