その願いは正解じゃない




―――次の日


「あれ?お前の家もこっち方面だったのか…」

「赤砂、だったな…」

「そうだけど。そう言う君はうちは、だったっけか?」

「ああ」


まあ聞かなくても知ってるけどね。知り合いに二人"うちは"がいるんで。


「んー、まぁ(本気出せないけど)足手纏いにならないくらいは頑張りますわ」

「…」


スタスタ…と先に歩を進めるうちはくんを追って僕も歩き出した。


「あ、おはよう!サスケくんに赤砂さん!」

「…」

「おはよう」

「はよー!!あれ?赤砂、荷物は?」

「…いらねーよ…。ここにあるのだけで十分」


小さな小物入れを腰のあたりにヒモでくくりつけてある。まあ、何かで切られない限り落ちないように丈夫にくくってあるけどな、チャクラ流しこんだヒモで。


「とりあえず、此処で待ってればいいんだよな?」

「そうみたい」


―――1時間経過


「…暇」


普通の糸でその変の葉っぱを回して遊んでたけど厭きたし…


「だー!!先生ってば何してるんだってばよーっ!!」


―――2時間経過


「………」


 カチャカチャ


暇だったので増やす必要ないかもしれない、と思っていた傀儡を作り始めた。まあ、仕込みだけなんだけどね…。本体は家だし、此処で出すわけにはいかないし。


―――3時間後


「やー諸君!おはよう!」

「「おっそーい!!!」」


演習場に遅れてやって来た先生が丸太に目覚まし時計を置いて12時にセットする。そして、スズを昼までに自分から奪え、とか言うし………ん?此れって個人で向かって行ったって敵わないんじゃないの?手裏剣ありで殺す気で…ねえ。


「じゃあ、殺しても良いんですか?」

「そんな事したら自分達が困るだけだけどね」

「(…殺せるわけないじゃないですか。サソリさんならまだしも今の僕じゃ貴方には勝てませんし…)」


火影に無意味に殺すなって言われてますしね。


「ま…ドベはほっといて"よーい、スタート"の合図で」


と、言った瞬間うずまきくんが先生に突っ込んで行った、が……一瞬の内に押さえ込まれた。


「………」


はっきり言って強さは化け物並。でも、暁にはこれ以上に強いや人が沢山いる。そんな中で育ったからか特に驚く事もなかった。


「そう、あわてんなよ。まだ、"スタート"は言ってないだろ。でも、ま…。俺を殺るつもりで来る気になったようだな…。やっと俺を認めてくれたかな?。ククク…なんだかな。やっとお前等を好きになれそうだ…じゃ、始めるぞ!!…よーい…"スタート"!!!」


まずは気配を消して隠れることから、だね。うちはくん達はうまく隠れたみたいだ。ていうか、いつまでも同じ所に止まるのは嫌いというか苦手なんだけど…。まあ、"いざとなったら助けてあげる"って意味で誰にも分からないくらいに細くしたチャクラ糸を駄目そうなうずまきくんにつけておいた。うちはくんとか春野さんは大丈夫だと信じてる、うん。


「いざ、尋常に勝〜負!!しょーぶったらしょーぶ!!」

「………あのさァ…お前、ちっとズレとるのォ……」


…いや、一名馬鹿がいたみたい。


「ズレてんのはその髪型のセンスだろー!!」


うずまきくんがダッと走り出すと急に止まる。その理由は、先生がポーチに手を突っ込んだから。先生は武器を使う気なのだろうか…?


「忍戦術の心得その1、体術!!…を、教えてやる」


出したのは本、しかも裏表紙には何か怪しいマーク。あれ、○○禁止ー、みたいなマークじゃなかったっけ?イチャイチャパラダイス中巻…イチャイチャパラダイスって何…?


「!?」

「…?、どうした。早くかかって来いって」

「…でも…。あのさ?あのさ?なんで、本なんか………?」

「何でって…本の続きが気になってたからだよ。別に気にすんな…。お前等とじゃ本読んでても関係ないから」


なめられているみたいだねぇ…。そして、その挑発とも取れる発言に乗ってしまったうずまきくんはなんかもう呆れるような技で倒され湖の中に落ちた。何だっけ?千年殺し??その後、湖から出てきたうずまきくんは影分身で先生を捕らえて殴ろうとした。だが、相手は変わり身を使っている。なので当たる寸前でうずまきくんを止め、地面に下ろした。


「!?、う、ううう、動かないってばよ!?え、何!?おばけえええ!?」

「ちょっと黙ってれば?めんどーな事したくなかったんだけど」

「赤砂!?ちょ、何するんだってばよ!!」

「コレ先生じゃないから…」


クナイで引き裂けばボフンと消えたカカシ先生に"ハァ…"と溜息を零す。引っかかっちゃ駄目でしょーよ…。


「うー…。あ、スズ発見!!」

「あ、おい馬鹿!!」


そして、木の下に落ちてたスズを拾おうとして罠に引っ掛かり足をヒモで縛られぶらんぶらん、とゆれているうずまきくんに先生が近付いた。


「術は良く考えて使え。だから逆に利用されるんだよ……。それと…バレバレの罠に引っ掛かるなバカ」

「ムッキィ―――――!!!」

「忍者は裏の裏を読め!」

「ンなの分かってるってばよ!」

「あのね、分かってないから言ってんの。ったくお前は…ついでにカイア見つけた」

「見つけられても勝てますか?」

「(ちょっと厳しいけどね)」


その瞬間、木の上から手裏剣やらクナイやら飛んできて先生に刺さる。うちはくんもアウト、か。


「うわぁ!!うわぁ!!モロだぁー!!サスケのヤローやりすぎだろォー!!」


だが次の瞬間ポンッと先生は丸太に変わる。そして、居場所がバレたであろううちはは多分違うところに行っただろう…。僕もその辺ふらふらしてみるかなぁ…?


「助けろってばよー…!」


そんな声聞こえなかった振りだ。助けたって同じ事になれば意味がない。


「あぎゃああああああああ!!!」

「!!」


春野さん…引っ掛かったな…。


「よっしょ…」


先生達の気配から遠く開けた場所に出たので回りにワイヤーを張って一本のワイヤーにチャクラを練りこみ何かが当たったらすぐさま気配を消し、木の上に隠れられるようにした。


「見つけたよ」

「っち…あんた、なんで入ってこれた?」


張っていたワイヤーを素早く集めると小物入れの奥に仕舞った


「だって、あんだけワイヤー張ってれば上から見たら嫌でも分かるでしょーよ」

「っちぇ…」


構えると蹴りを繰り出すが止められ拳を出しても止められ


「サスケと同じ方法は取らせ無いよ」

「違うっつー、の…!!」


先生の胸元を蹴って土遁で地面に潜りうずまきくんがいた場所まで逃げる。


「…」


何とか逃げ切れたみたいだけど…油断禁物、ってね。そんな中うずまきくんがまだぷらぷらしていたので助け出し加勢してくれるように頼む。


「で、でもさ!でもさ!先生ってば強いんだぞ!?俺等2人でいいのかよ?」

「戦うのはお前だけだ」

「!?」

「体に力を入れるな、力むな。僕に体を預けろ。大丈夫、怪我させやしないから」

「わ、分かったってばよ!あ、そだ、名前!俺の事は"ナルト"でいいってば」

「!、じゃあ、僕の事もカイアでいいぜナルト」

「おう!!」

「うまく逃げられたけど次は逃がさないよ」

「…甘いぜせんせー。行け、ナルト!!自分の意思で戦ってくれ」

「おー!!」


チャクラ糸でナルトを補佐するのが僕の役目。これで、春野さんとうちはくんが気付けば問題ない。この演習の目的は、チームワークだ…!チームワークを見てるんでしょう?先生。蹴りを繰り出し拳を繰り出すが、全てが避けられる前にチャクラ糸で軌道を補正し直し当てる…!


「っ…!まずは、お前を倒さなきゃ駄目みたいだな、カイア」

「はは。今頃気付いたって遅いですよ先生。僕が傀儡師だってこと忘れちゃいませんよね?」

「ッ!!、…はは、今のは危なかった。いくら殺す気で来いって言ったからって毒はないでしょ」

「じゃあ、傀儡無しで行きます?ナルト&僕Vs.先生でいいですか?」

「ま、いいよ」

「おらァ!!」


 ブンッガッドッ、バンッ!


「あ、赤砂さんとナルト!」

「?、あれ本当にあいつの動きか…?あいつの動きに追いついてやがる…」

「…物を動かすのは得意でして!!」

「へえ、これも趣味の一環、な、わ…けねッ…!」

「避けるの大変ですか?せ・ん・せ・い?」

「意地悪いねェ、君」

「ありがとうございます」

「影分身の術!!」

「ったくー、こっちの身にもなりなよナルト!!」


今は操れたとしても20くらいが限度かな…、瞬時に反応して指を動かし腕を動かさなければならないから凄くめんどくさいけど楽しいんだよね、此れが…!いつかサソリさんみたいに百機操ってみたいなぁ…。っていうか、これ見てるなら早く気付いてよ、2人とも…!


 ジリリリリリリリ!


「はい、終わり」

「………あー…」

「終わっちゃってばよ…」

「!、…だな……」


苦笑しながら丸太の場所へと歩いて戻る。ナルトが僕に協力したのはスズが欲しいからだろうし…、僕だってスズの為に最初は動いていた。嗚呼、チームワークどころじゃないな、実戦だったら即死んでる…。


「おーおー腹の虫が鳴っとるね……君達。ところでこの演習についてだが、ま!お前等は忍者学校に戻る必要もないな」

「「「!!」」」

「…(はあ…多分喜んで良い意味じゃないな)」

「ハー」

「フン」

「じゃあさ!じゃあさ!ってことは4人とも…」

「……4人とも忍者をやめろ!」

「「「「!!!?」」」」

「忍者やめろってどーゆーことだよォ!!」


丸太に縛り付けられたナルトが言葉で反抗する。


「そりゃさ!そりゃさ!確かに、スズ取れなかったけど!なんで、やめろまで言われなくちゃなんねェんだよ!!」

「どいつもこいつも忍者になる資格もねェガキだって事だよ」

「あ!サスケくん!!」


それを聞いてうちはくんがダッと走り出したがこれもまた最初のナルトのように一瞬で押さえ込まれる。


「だからガキだってんだ」

「!!」

「サスケくんを踏むなんてダメー!!!」

「お前等忍者なめてんのか。あ!?何の為に班ごとのチームに分けて演習やってると思ってる」

「え!?…どーゆーこと?」

「!」

「つまり……お前等はこの試験の答えをまるで理解していない……」

「答え…!?」

「そうだ。この試験の合否を判断する答えだ。ナルト、お前には知る機会があったはずだ」

「は!?」

「っていうか…さっきからそれが聞きたいんですけど…」

「…………ったく」

「あ〜も〜!だから答えってなんだってばよォ!?」

「それはチームワークだ」

「「「!」」」

「4人で来れば…スズを取れたかもな」

「!、なんでスズ2つしかないのにチームワークなわけェ?4人で必死にスズ取ったとして2人我慢しなきゃいけないないんてチームワークどころか仲間割れよ!」


まあ、そうだろうねェ…一般的に考えたら。てか、冷静になったら分かる気がしてきた。


「冷静になりなよ。考えて見ればこれは最初から仕組まれてたんだよ」

「ど、どういう事だってばよ…?」

「カイアの言うとおりだ。コレはわざと仲間割れするように仕組んだ試験だ」

「!!」

「え!?」

「この仕組まれた試験内容の状況下でも、なお自分の利害に関係なくチームワークを優先できる者を選抜するのが目的だった。それなのにお前等ときたら………」


教えてやるのはあまりにもダメだと思い、ナルトと協力(っつーか加勢?)して戦ったけどナルト自身気付いてくれなかった。気付いてなきゃ無意味なんだ、此れは。きっと僕とナルトでスズを取れると思ったんだろう、ナルトは。だから協力したんだ。結局は僕一人で戦ってたようなものだしね…。


「…サクラ…。お前は目の前のナルトじゃなく何処にいるのかも分からないサスケの事ばかり。ナルト!お前は、一人独走するだけ。最後にカイアが答えを気付いて気づかせようとしていた事にも気付かずやっぱり独走。サスケ!お前は、3人を足手まといだと決めつけ個人プレイ。カイア!お前は答えを気付かせようとしたんだろうがあれも結局は個人プレイだ」


ほら、やっぱり。僕は傀儡の変わり(と言ったら本人に悪いけど)にナルトを使ったようなもの…結局は本当に個人プレイだったわけだ。


「任務は班で行う!確かに忍者にとって、卓越した個人技能は必要だ。が、それ以上に重要視されるのは"チームワーク"」


答えを見つけてもそれを実行出来ない限りは意味がない、と言う事でもあるのだろうか…。


「チームワークを乱す個人プレイは、仲間を危機に落とし入れ」

「?」「!」

「殺す事になる。……例えばだ……サクラ、カイア!ナルトを殺せ!さもないとサスケが死ぬぞ!」

「!!」

「え!!?」


まあ、それは唯の冗談な訳だけども…。これが本当の戦闘ならないという可能性がないわけじゃないもんね…。


「これを見ろ」


それは石碑だった、石碑には無数の名前…。


「この石に刻んである無数の名前。これは全て里で“英雄”と呼ばれている忍者達だ」

「それそれそれそれーっ!!それいーっ!!」


ナルトが先生の言葉に反応する。


「俺もそこに名を刻むってことを今決めたーっ!!英雄!英雄!犬死になんてするかってばよ!!」

「…がただの英雄じゃない…」


カカシさんがナルトに対して答えた。大方殉職した奴等って所だろう。


「へーえーじゃあどんな英雄達なんだってばよォ!」

「任務中殉職した英雄達だ」

「!!!」


殉職の意味が分かったのだろう、ナルトは静かになった。


「これは慰霊碑。この中には俺の親友の名も刻まれている…」


…任務で死んで逝った人の慰霊碑、か…。


「…お前ら!最後にもう一度だけチャンスをやる。ただし昼からはもっと過酷なスズ取り合戦だ!挑戦したいやつだけ弁当を食え。ただしナルトには食わせるな」

「え?」

「ルール破って一人昼めし食おうとしたバツだ。もし食わせたりしたらそいつをその時点で試験失格にする。ここでは俺がルールだ、分かったな」


そういうと先生はどこかへ消えた。…ナルトは、丸太に縛り付けられている=昼飯抜き。最初に丸太に縛られた奴は昼飯抜き、とか言ってたような気もしたのでそう驚きはしなかった。


「へっ!俺ってば別にめしなんか食わなくったってへーきだっ ぎゅるるるるる …」


お腹のほうは正直なんだね、ナルト…。3人で弁当を丸太の近くで食べているからだろうけども…。ナルトのお腹は未だ空腹を訴えている。…正直このまま空腹のままでいられてもチームワークどころじゃない上にチャクラ糸で操ったって使い物にならないだろう。


「ん。食えよ馬鹿」


そう言ってナルトに弁当を差し出すと当然ナルトと春野さんは驚く。うちはくんは僕の考えが読めた様で「ほらよ」と弁当を差し出す。


「ちょ…ちょっとサスケくんも赤砂さんも、…さっき先生が!!」

「大丈夫だ。今はアイツの気配はない。昼からは4人でスズを取りに行く。足手まといになられちゃこっちが困るからな」


いや…多分そこらへんで見てるんだろうけどね…。その後春野さんも少し考えたが、弁当をナルトに差し出した。


「へへへ、ありがと…」


すっごく嬉しそうに笑うナルト。なんか、こっちまで笑えてくるんだけど…。弁当一つで其処まで…。


 ボン!


「何だァ!!」


突然煙が出て来たので全員構えるとそこから


「お前らあああ!!」


もの凄い形相で先生が現れた。そりゃあ勿論驚く。3人は現れた事に驚いたんだろう、僕はと言えば凄い形相に驚いた。ナルトと春野さんはなんか叫んでいたけども。


「ごーかっくVv」

「え?」

「は?」


ハートマーク付きそうな勢いで合格宣言。


「合格!?なんで!?」


突然のことに、嬉しい報告も嘘に思えてしまう。


「お前らが初めてだ」

「え?」

「?」

「今までの奴らは素直に俺の言うことをきくだけのボンクラどもばかりだったからな。…忍者は裏の裏を読むべし。忍者の世界でルールや掟を破る奴はクズ呼ばわりされる」


ルール第一だからな…工事現場かよ!とか思うほどに。
(カイア、工事現場は安全第一よby小南)


「……けどな!仲間を大切にしない奴はそれ以上のクズだ」


…仲間を、大切に…ふーん。結構深い事言うね、この先生。


「これにて演習終わり!全員合格!!よォーし!第7班は明日より任務開始だァ!!!」


先生は親指を立てて言ったけど結構古いよ、ソレ。


「やったああってばよォ!!!俺忍者!忍者!!忍者!!!」


ナルトも大喜びしていた。良かったね、ナルト。


「帰るぞ」

「しゃーんなろー!!」

「あー…帰ったら傀儡作って…ご飯食べて…スザクを馬鹿にして貶して騙して痛めつけてゴミ捨て場に捨てに行こう」

「ダメだよね、ソレ」

「ある意味虐待よ?それ」

「つーか、お前案外怖い奴だな。身長を見る限りそうは思わないが」

「んだとサスケっ!!もう敬意を込めて苗字なんかで呼ぶか!!お前何かサスケで十分だこの野郎!」

「好きにしろよ…カイア」

「ふんっ!」


あ、もちろんナルトは…


「って!どうせこんなオチだと思ったってばよォ!縄ほどけェー!!カイアー!縄ほどけェー!!」

「むっ))…サスケを縄で縛ったけど縄抜けで抜けられたんだろー?サスケから縛られたと思って縄抜けの術でも練習するが良いさ!」


頼み方が僕を苛つかせたのがいけないんだよナルト。命令されるの嫌いなんだ。


「「「(助ける気、皆無だ…)」」」


その願いは正解じゃない


その後カイアはナルトに自称"偶然通りかかった優しい子"と言ってナルトを助けたとさ。




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