白州は無言を貫く

寮の部屋で一人音楽を聴きながら寛いでいると、来客があった。

「よお」

「…珍しいな」

御幸と倉持はそれぞれペットボトルを片手に、挨拶もそこそこ勝手に部屋に上がり込んできた。

「これ、お前の分」

「ああ、サンキュ」

手渡されたペットボトルを素直に受け取り口を付けると、急に二人がそわそわし始めた。

「で、何の用?」

「いや、何ていうかさ…」

「あ、その前に。白州、俺は止めたぞ。許せ」

「何が…?」

「お前、みょうじのこと好きだろ」

ばっさりと言い捨てたのは御幸。倉持は本意ではないとばかりにむくれた表情をしている。
そして俺はというと、誰にも言ったことのない自分の気持ちを御幸に言い当てられて、内心ひどく動揺した。

「………」

「あれ、違った?」

「…何のことだ」

「いや、だからさ」

「御幸もうやめとけ」

さらに畳みかけるように言葉を続けようとした御幸を倉持が止めた。

「すまん、白州。ちょっとどうなんだろうなって話したことがあった程度で、俺たちがどうこうしようとかそういうのじゃねーから」

「…ああ」

「何かお前って好意を抱いても、ずっとひた隠しにして相手に伝えねーんだろうなって思って」

「………」

好きとはいかないまでも人に好意を持ったことはあるが、確かに今まで誰かにそれを言ったことはない。もちろん相手にも。
みょうじのことは好きだが、告白しようと思ってはいない。

「せっかく近くにいるうちに伝えといた方がいいんじゃねーの?」

どうやら二人が一番言いたかったことはこれだったらしく、それ以上この件に関して言及しようとしない。
遠回しなんだか直球なんだか。

「余計なお世話だ」

そういうお前らはどうなんだと聞くと、上手いことはぐらかされてしまった。

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