殴り愛企画!



てか俺仮にも年上なんですけどそれは
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えっちなお姉さんは好きですか?って質問、あれは何だろうね発祥の地はどこ?途轍もない愚問で臍で茶が沸かせそうなんですけど、うーん…これは玉露なので沸かしたら熱すぎますね。それはさておきさっきの質問、聞かれんでも好きに決まってない?嫌いな奴いる?

「いるんだな〜これが!」

わははと笑って、隣の赤司の肩をバシバシと叩く。横っ面にビシバシ刺さる絶対零度の視線より、俺の手元にあるグラビア雑誌に一ミリも興味を示さない赤司の方が問題だ。視界にモザイクでもかかる体質なのかな?こいつなんか目凄いんじゃなかったっけ何でも見える(小並感)的なやつじゃなかったっけ?バシッと俺の手をはたき落として、赤司が穢らわしいものを見るような目で言った。

「練習にそんなものを持ってくるくらいなら、帰ってもらっても構わない」

訂正、穢らわしいようなものを見るような目ではなく、赤司から見た俺は穢らわしいもの現行犯なようです、反省。後悔はしていないしする気もない。

役立たずのマネージャーな俺のお仕事は、大抵力仕事だ。中学の時に怪我をしてバスケが出来なくなっちゃった俺を拾ったのは、ミニバスで一緒だった一個下の実渕。データやスコアとかの作業だってやるこたやってるのに、こんなふうに怒られちゃう俺可哀想だなって思う。

「良いじゃん、休憩時間だろ今」

はたき落とされた手を見て、肩を竦める。小脇に抱えたグラビア雑誌をパラパラと捲る。俺の一番お気に入りのグラドル、お気に入りの水着、お気に入りのポーズ。ヒュウ、と冷やかすように口笛を吹いて、飲み物でも飲もうとしたのか背中を向けた赤司をガバッと後ろから捕まえる。うわ、と驚いて声を上げたそいつの肩に、二人羽織に似た体勢で顎を乗せた。

「ほらほら〜!赤司は真面目過ぎんだよ!見てみろって!」

「ちょっ…近…!」

「息抜きも大事〜!」

身体を固くした赤司の顎に手を添えて、頑張って片手で開いたグラビア雑誌に向けさせる。ごくり、と喉が動く気配がしたので、なんだよお前も興味あんじゃん、とニヤリと笑った。毒を食らわば皿まで。やっと赤司くんも年相応におっぱいとお尻の魅力に気付いてくれたようで何よりである。

グラドルの乳が腕で支えられてむにっと変形している。幾つだろうなこれ、エフカップくらい?それとも滋養強壮にも効きそうだからエスカップかな?ごめん黙ります我ながらサムい。ちらっと見下ろした赤司の耳がじりと焼けたように赤いのを見て、グラビアに集中してても聞こえるようにとその近くで笑った。

「…ほ〜ら赤司、よく見て…えっちだろ?」

「…っ!!」

「む゛ぇ」

ドン、と腹に衝撃が走る。的確に鳩尾とこんにちはしたのは、赤司の肘だった。お前バスケやるんだったら肩から上は大事にしなさいよ、と思いつつじわりと痛みが広がる腹を撫でる。思わず赤司から剥がれて自分の腹に穴が空いていないか確認したが、どうやら本気で殴られたわけではないようだ。本気で殴られたからって穴が開くわけじゃないんですけどね。

「いい加減にしないか、ミョウジ」

「っ、てぇ〜」

唇を尖らせて、取り落とした雑誌を拾う。赤司だって顔を真っ赤にして見入ってたんだから、ここまですることないじゃんと思う。言おうとして腹をさすりながら顔を上げると、瞳孔をかっ開いて俺を睨みつける赤司と目が合った。その殺意溢れる様相にふともしかして、という考えが頭を過ぎった、ので、聞いちゃったほうが早いかと素直に脳から直に声を出した。

「お前もしかして精通来てなかったりする?」

瞬間、後頭部からスパン!といい音が鳴った。あまりの驚きに身動ぐこともできなかった俺に、後ろから怒声が浴びせられる。びっくりした、拳銃で撃たれたかと思った。じんわりと痛みが広がる後頭部に手を当ててのろのろと振り返ると、般若の如く目尻を釣り上げた実渕がバインダーを掲げていた。結構硬いやつだよね俺それで頭殴られたん?道理で痛い。

「いい加減にしなさいよバカアンタ本っ当バカ最低!征ちゃんごめんねこのバカが!」

「バカって言い過ぎでは?」

と、その時、ビーっと四角いタイマーが大声を上げる。休憩が終わりの合図だ。もうこんなバカ放っといて練習しましょ征ちゃん!と熱意たっぷりに実渕が赤司の背中を押した。そんなにバカって言う?そんなこと言ったら叩かれるたびに脳細胞死ぬんだけど、余計バカになるぜ?ってか俺怒られるようなことした?さっぱり分からん、ただのコミュニケーションじゃん。そんなことを考えながらうーん、と頭を悩ませて、一応休憩も終わったし、実渕に押し付けられたバインダーを持ち直す。

精通来てるのかも含めて(殴られるからもう言わん)赤司のことがさっぱり分からん。今年卒業だし普通に仲良くなってもいいんじゃねぇかな〜と思って歩み寄ったんだけど、少しやり方を間違えてしまったらしい。今の感じだと大層嫌われているっぽいので、もう少し俺のこと好きになってくれればなぁ。ぼんやりと練習に励む赤司の横顔を眺めていれば、一瞬視線が合ってすぐに逸らされてしまった。俺が言うのも何だけど、思春期なんだろうな、多分。











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