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08




砲弾を縦一列、ちょうど船が真っ二つになるように撃ち込んでやったので、敵船が沈むのは時間の問題だろう。さすが我が部下、と頬を緩ませれば後ろの海兵が口を開いた。

「…来ますね」

「来るだろうな」

マストに括りつけたロープにしがみつき、相手船から屈強な男たちが飛び移ってきた。そしてこちらの軍艦に降り立つなり武器を抜いて近くの海兵に攻撃を仕掛け始める。想定内というか、ほとんど予定とも言って良かったその行動に海兵達は誰一人焦ることもなく冷静に武器を振るい、一人一人沈めている。おれも腰の銃を抜き、苦戦している部下の相手を横取りするように敵の足や腕を撃ちぬいていく。

「賞金首は何人いる?」

「この海賊団には五人います、うち二人が能力者です」

「あれと、あれか」

「ええ」

効かないと分かっていながらも能力者を判別するために一人ずつ弾丸を当てる。ロギアとパラミシア、厄介なことにこちらの部下が何人か負傷しているようだ。

「面倒だ、先にロギアだな」

ロギア系能力者らしい男の頭を、何発も狙い撃つ。一、二、三、四、五。さすがに気に触ったのか、こちらを射殺さんばかりに睨み付けてくる。次のターゲットを決めたようだ。ざ、とその姿が掻き消え、かすかなもやのようなものだけがその男が立っていた場所に残る。

「…霧、か?」

「正解だ」

真後ろから側頭部を強かに殴りつけられる。ほう、そこそこ良いパンチだ、なんて軽口を叩けば相手から舌打ちが返ってきて、そこからは雨のようにスピードのある拳や蹴りが撃ち込まれる。十四、五発ほど体に叩き込む予定だったらしいものを避けたあたりで、右手に武装色の覇気を纏わせ、振り向きざまに腰を入れて相手の胸ぐらを後ろ手に掴んでから顔面に拳を叩き込んだ。蛙が潰れたような悲鳴が聞え、相手が意識を飛ばしたのを確認してから、床にその体を放り出す。

「…避難するくらいならこいつを縛り上げておけ」

「バレましたか」

「さすがにな」

俺を部屋まで呼びに来た海兵がいつの間にか手錠や縄を持ってきていたので、縛っておくようにと言い付ける。ほか何人か海賊を沈めて全員捕縛し、備え付けの簡易的な牢屋にぶちこんで、今回の遠征の表向きの目的はめでたく果たされた。徹夜明けにさんざん暴れまわった体が軋むのを感じ、伸びをしてから電伝虫の受信機を持ち上げた。

「諸君、今回も素晴らしい働きだった、まだ治療を受けていない負傷者は直ちに治療を受けること、ご苦労だった」

はっ!と敬礼と返事が揃う。よろしい、ガチャン、と通信を切って食堂に向かう。ローの分の朝飯も貰ってこなければならない。熱が引いていなかったら喉に引っかかるパンだと可哀想だろう。パサモンテ少将、おはようございます。掛けられる声に答えながら食事を求めて列に並んだ。






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