MC:01747






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少し考えて、席を外すことにした。おれがいたら感情を出すに出せないだろう。応急処置も済ませてあるので放っておいても大丈夫だろうと思い、何が食べたいか聞いてキッチンに向かった。粥くらいならおれでも作れる。

かち、とダイヤルを起動させる音が聞こえた。途端にザアザアゴウゴウと海の上を思わせる雑音が部屋の中に満ちる。あ、と小さいローの肉声が聴こえて、その後に録音された音声が続いた。

「もしもし!ヒネス!」

「もしも、その声は…ロシナンテか!お前今どこにいる!」

「今は北の海のミニオン島に向かってる!任務からは離れているんだ!お前に頼みがある!」

「おい、どういうことだ!唐突過ぎて何がなんだか…!」

「いいから聞いてくれ!一生のお願いだ!」

「お前の一生のお願いは聞き飽きたぞ馬鹿者!」

「救いたい命がある!ミニオンまで来てくれ!おれはしくじるかもしれない、相手はドフラミンゴだ!しかも任務からも離脱してる、おれは今から、海軍とドンキホーテファミリーを相手取る事になる!」

「な、にを、なにをしている!そんなことして、無事でいられる訳が…!」

「だからだ!無理を承知でヒネス、頼む!少年を一人救ってくれ!もうこいつは!自由になっていいんだ!」

「ロシナンテ!言っている事が支離滅裂だ!というか前提として私も海軍だぞ!それはドジか!?」

「ドジじゃない!お前になら頼めると思ったんだ!少年はローと言う!珀鉛病だ!海軍と海賊との取引で受け渡されるオペオペの実を食えば、ローはその能力で助かるだろうがドンキホーテファミリーに狙われる事になる!真っ向から戦えばおれも命はない!だからお前が助けてくれ!おれの代わりに、ローを守ってくれ!こいつはおれを慕ってくれてる!助けたいんだ!おれはそのためなら死んでも構わない!」

「て、めっ…!滅多な事を言うんじゃねぇよ!おれがそんな危険な事に首を突っ込むとでも…ッ、クソッ」

「お前は、来てくれるだろ?」

「最低だロシィ!おまえ!死んだら許さんからな!ローとかいう少年だけでなくお前も助けてやる!クソったれ!絶対に死ぬんじゃねえぞ!」

「ハハハッ!お前はそういう奴だよ!頼りにしてるさ!」

「笑うんじゃねえ!いいか!今から向かってやる!おれに一生尽くす気でいやがれバカヤロウッ!」

「おいおい!口調が崩れてるぞ准将殿!」

「今は少将だ!ドシナンテ!」

「はいはい、昇進おめでとう少将殿!切るぞ!」

「バカ!ちょっと待て!もう少…」

ブツッ、トーンダイヤルの録音が終わる。あとに残ったのは沸々と茹だる粥の音と、ベッドの方から聞こえる少年の悲痛な啜り泣きだけだった。



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