MC:01747






02




「お前たちは、本当に似ているな」

ロシナンテと並んでいたら、そういうふうによく言われた。同い年で同期、顔も見分けられないほどよく似ていると言われたが、生憎平素では表情の使い方が全然違う。ロシナンテは基本的によく顔にもれなくあらゆる内心が出るタイプだが、おれはどちらかというと嫌だとか邪魔だとかうざったいだとかそんな感じの負の感情しか出ない。喜んだ時なんてそれが顕著に出る。ぱあっ、とそこまで行ったら馬鹿なんじゃないのか、と思うように喜ぶロシナンテは本当に面白くて人懐っこいやつだ。子供にもよく好かれる。だから。

「お前、コラさんじゃないな」

「そう言ってるだろう」

おれのベッドから油断なく睨み上げてくる少年の、扱い方がわからない。おれは頭を抱えそうになった。

コラさん、それはロシナンテがドンキホーテファミリーに潜入した時のコードネームのようなもの、コラソンの敬称なのだろう。この子供、ローがおれの顔を初めてちゃんと見た時に呼んだことから、最初ローは俺の事をロシナンテだと思って安心して気を失った、と容易に想像できる。それに、こいつはきっと、目の前でロシナンテが瀕死になるまでいたぶられていたところを見ていたのだろう。

「お前はなんだ」

「私か?」

タオルとぬるま湯が入った洗面器を近くのテーブルの上に置き、おれはローが逃げ出せるほど開けた距離にしゃがみ込んだ。不用意に近寄ってこれ以上警戒されたらかなわない。

「私は、パサモンテ・ヒネス、海軍本部勤務の少将で、ドンキホーテ・ロシナンテ中佐とは同期で同い年だ」

「コラさんの、同期」

まだ疑っているようなローに、ローの血と埃、溶けた雪で湿ったコートのポケットから海兵手帳を取り出して、ベッドの上に放る。小さな手がそれを掴んだのを見計らって、口を開いた。

「マリンコード、01746、これはロシナンテ、私はそれに一つ足して01747だ」

海軍である、という事に関しては認めたらしい。中身をパラパラと見ているがどこを見ているのだろうか、子供の目線で海軍手帳を見たことがないので気になる。ふうん、と興味なさ気にそれをベッドの上に置いて、疑ってます、と言った顔のままローがこちらを向いた。

「…別のところから海軍に入ってるスパイじゃないのか」

「生憎身も心も海軍カラーだよ、残念だったな」

「その顔はなんだ、なんでコラさんにそっくりなんだ」

「……生まれつきだ」

「なんであそこにいた、どうしておれを助けた」

「ああ、そうだな、それを話せば何とかなるかな」

また汚いコートを漁って、今度は電伝虫を引っ張り出す。おれの電伝虫は改造済みで、貝の部分を秘密裏にトーンダイヤルに変えてあるのだ。それもローに向かって放り投げる。

「聞いてみるといい」

「な、んだ、これ」

「改造電伝虫」

ローの目が見開かれて泳ぎ、顔色が変わる。そこにロシナンテの声が入っていると察したのだろう。今の今までまるっきり疑っていた様子のおれの顔を不安げに見上げてきた。俺とロシナンテは声まで似ているが少しあいつの方が話し方が騒がしい。聞き分けは出来るだろう。踏ん切りがつかない様子の子供の頭を、今なら大丈夫かと見計らって、帽子の上からぽん、と撫で付けた。



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