MC:01747






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次の日から、訓練を始める事にした。超特急で集めさせた資料によると、オペオペの実を食した者は改造自在人間と呼ばれ、生き物をその生きたまま切ってくっつけたりだとか、一人で手術室の設備顔負けのことが出来るらしい。不老手術もできるらしいが術者はそれにより命を失ってしまうらしく、なるほどそれでドフラミンゴが、と少し納得もした。因みに部下にはローのことは知らせていないため、カモフラージュの為にオペオペの実の資料の他にも色々な資料を無駄に要求したが、これは職権乱用などでは、ない。

「つまりあれだ、手術に関わる能力だからレントゲンなんかも一人で出来るという事だな」

「それとこのおにぎりの量は関係あるのか?」

「お前の分は一つだ」

ゴトン、とおにぎりが六個乗った皿がテーブルの上に置かれる。ローは、何を言っているのだか分からない、と言ったようにこてん、と首を傾げた。中身は大人に近い割にまだ子供な部分もあるようだ。子供らしい仕草が戻って来たという事は、少なからず気を抜いてくれていると思ってもいいだろう、とくしゃ、とその髪を撫でる。ちなみに白いふわふわの帽子は埃や土で汚れてしまっていたので洗濯をした後で、窓際で日光浴中だ。

「この中に、一つだけ鮭おにぎりが入っている」

含みのある言い方をすれば、ローの細い眉がぎゅ、と寄せられた。何が目的なのか察しが付いたのかは分からないが、下らないことを企んでいると気が付いたらしい。残念ながら、それはもちろん当たりである。

「他は?」

「全部梅だ」

「…はぁ」

ローが溜め息をついた。まあ効率が良いといえば効率は良い。食に関わることだから危機感も増すだろう。人間は腹が減っていたほうが集中力や筋力も発揮できるし、何よりものを食べないと死んでしまう。ローにとって梅干しとは、それだけの脅威だ。

「この中から鮭おにぎりだけを透視して食ってみろ」

「やっぱバカかおまえ…そんなことだろうと思ったよ」

「梅を引いたら全部食わすからな」

「………鬼」

むう、と唇を突き出したローは、その表情のまま整列して食べられるのを待っているおにぎりを睨みつける。おれはオペオペの実の能力者ではないので分からないが、ローの隈に囲まれた目には何か見えているのだろうか。集中を切らしてしまうのを覚悟で声を掛ける。

「何か見えたか?」

「なにも…使い方、分かんないし…」

「そうか…」

参ったな、と腕を組む。おれの時はどうやって実の使い方を覚えただろう。頭を捻って思い出す。いやおれだけの例じゃ心許ない。今まで遭遇した能力者は、どうやって能力を使っていたのだろう。そう考えても大したことは浮かばないので一度自分の能力を省みた方が良いだろう。

「エリア…イレイズ」

「お、おい…!何してんだよ!」

ブワ、と広がった能力の範囲を確認しつつぱちん、と指を鳴らして、おにぎりの醍醐味の海苔を消す。それにローが逆上して掴みかかってきたのだがこいつはそんなに海苔が好きだったのか。おれは無くても食える。何より先におれが海苔を消したことに関して怒った可愛い少年は、なぜ海苔が消えたのかに気が付いてハッと銀シャリの輝くおにぎりに視線を戻した。

自分でやって、もしかしてと引っかかる事があったが、思い当たったことがそれなら、なんて悪魔の実は単純なのか、と思った。単純なロシナンテの言っていた事も一理あったのかもしれない。単純なのは人間かもしれないが。とりあえず真剣な顔でおにぎりを見つめるローが面白すぎるから何とかしてほしい。





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