はっぴーえんどの口づけ



どうしてこんなことになっているのか……。

とりあえず、顔を上げてと天哉くんに頼んだ。二人とも大学生になって、一人暮らしの彼の部屋。他愛のない話からの突然のキス。ああ、やっとそういう行為ができーーと思えば、謎の土下座。ベッドの上で。何故、天哉くんは土下座を……?衝動的にやったのはいいものの、「やっぱりごめんなさい」ということなのだろうか。そうだったら哀しみしかない。

「天哉くん?」
「すまない!本当に悪いと思っているのだが、君があまりにも愛しくて……責任は取る!だから、その、俺と婚前交渉をしてほしい!」
「こん、ぜん………」

交渉…………。あまりにもパワーワードに聞こえたので口を閉じてしまっていると、天哉くんが泣きそうにも見える顔で「やはり、だめだろうか……」と言ってきた。今時そんなの気にする人いないよ天哉くん!しかし、婚前交渉………責任を取る……結婚まで考えてくれているのがわかって嬉しい。

「一個だけ訂正してほしいかな」
「な、なんだ…?」
「責任を取るよりも愛がいいな」
「もちろん、君を愛しているさ」

歯の浮くような台詞を言ってくれるのも、さらりと受け止めてくれるのも、天哉くんだけだよ。そうは言わずに、笑って彼に口づけた。