爆豪家長男の素晴らしい日々


※3万打企画「こうして素敵な毎日が始まる」続編


「爆豪くんは、やっぱり雄英に行くの?」

女子がきゃあきゃあと、甲高い声を上げて聞いてくる。俺、爆豪雅己は、自分で言うのも何だがルックスは高い方だと思う。口は悪いが顔は悪くない父親と、落ち着いた髪色の母親のおかげだろう。ただ、性格だけは、どちらにも似ていないと言われるが。

「いや、サッカーの強いところに行く」
「えー。爆豪くんヒーローにならないの?絶対フォロワーになるのに…」
「ヒーローとか興味ないし。面倒」

姉がヒーローを目指してるだけで十分だ。他人のために闘うとかめんどくさい。なんだかんだ正義感の強い姉が、よく厄介事に巻き込まれているのを見て育ってきたから、ヒーロー=面倒な仕事だと偏見を持っている。

「あ、雅己じゃね!?」
「………………………切島くんだ」
「お前一瞬名前忘れてただろ」

親父そっくりだな!と、父と母の同級生で、プロヒーローの切島くんが豪快に笑った。お父さんそっくりとか嫌だな。

「まあ、美月の方が似てるけどよ」
「だよね」
「部活の帰りか?」
「うん」
「今から上鳴と瀬呂と飯食いに行くんだけど、お前も来るか?奢ってやるぞ」

心踊る誘いだ。部活帰りに食べ盛りで、腹がペコペコだった。切島くんも他の二人も、お父さん並みに稼いでいるから、どれだけ食べても怒られないし。家族で食べに行くと家で食べるよりもお金がかかるからって、連れていってくれないし………お父さんってケチだよな…。

「行…」

あ。でも、お母さんがご飯を作って待ってるはずだ。俺のためにわざわざ2品くらい足してくれて、尚且つ栄養面も考えてくれている。

「やっぱいいや。お母さんのご飯食べたい」
「お前らほんとにみょうじのこと好きな」
「もうみょうじじゃないよ」
「あー、そうだった。学生気分が抜けきれなくて困るわ」
「……………40だよね?」
「いてぇ。言葉の暴力だ」
「現実だよ」
「そのノリの悪さは親父そっくりだよ」

マジレスすんな、と俺の頭を叩いて、切島くんは去っていった。……。切島くんとかに会うと、ヒーローもいいかも…と思ってしまう。まあ、明日になったらそんな気持ちはなくなってるんだけど。

ヒーローとか、何でわざわざお父さんと比べられる世界にいかなくちゃならないんだ。学生時代のお父さんは、それはそれはさながらヴィランのようだったと、言われ続けているけど。それはお姉ちゃんもだから血なのかなって。たまに物間くんに会うらしいけど、確実に喧嘩が勃発するから駄目だ。しかも、お父さんvs物間くんじゃないんだよ。お姉ちゃんvs物間くんvsお父さんなんだよ。

「やっぱり俺は普通だね…」
「それはぜってー無ぇから安心しろ」

珍しく帰宅が重なったお父さんとご飯を食べていると、慣れた様子で言い返された。

「普通だよ」
「お前鏡見てみろ。どうしたらそんなに、死んだ目で居られんだよ」
「息子に向かって死んだ目って酷くない?お父さんに言われたくないよね。ヴィラン面のくせに」
「似てるてめえに言われたくねえんだよ!表出ろ!!」
「嫌だ。めんどくさい」

でも、たとえ耳元でぎゃあぎゃあ煩くても、ヴィランと見間違うくらい極悪人でも、お母さん一筋なのはいいと思う。僕はまだ好きとかわからないから。

「なまえ、今週服買いてえから、出掛けようぜ」
「あ、いいねー。勝人も美月も連れていこう!雅己は?練習あるかな?」
「休むよ。久しぶりだしね」

二人で出掛けるつもりだったのか、計画が狂ったと眉間に皺を寄せるお父さん。お父さんって、学生のときからこんなにお母さんのこと好きだったのかなあ。だとしたら、何だかちょっとおもしろい。

だってこの悪人面で、彼女の前ではデレッデレなんだよ?気持ち悪くな、

「………何で頭掴んでんの」
「このまま頭爆破されたくなけりゃ、父親に対して不躾なこと考えるのやめろ」

はいはい。息子に脅迫するなんて、それでも父親なんですかねぇ。ふてぶてしい態度を取っていたら、また頭を掴まれたからもう止めておいた。お父さんキレやすいね。更年期?

「雅己、もうすぐ三者懇談じゃないの?」
「うん。サッカー強いとこに行くから」
「おー行け行け。勝手にしろ」

ご飯を食べ終えたお父さんが、ソファに寝そべりながらあしらうように言った。まあ、この人に限って「お前はヒーローになるんだ!」とか言うわけないと思ってたけど……。お姉ちゃんのときより冷たくない?

「俺の息子が不出来なわけがねえだろ。心配する必要がねえ。やんなら1番になれ。それだけだ」

そんなこと言われると、何か、お父さんと一緒に働きたくなるじゃないか。普段は死んだ目をしてるとか言うくせに。悪人面で一部では「ヴィランかと思ったらヒーローだった」と言われてるのに、突然そういうこと言うからずるい。お母さんもこういうところがかっこいいと思ったんだろうか。

「また先生と相談しなきゃね。勉強も頑張ってね。お母さん応援してる!」
「ありがとう。俺、頑張るよ」

そう言うと、お母さんがにこっと綺麗に笑った。

「つーかよぉ、お前いつ上行くんだよ。ガキはさっさと寝ろ。今からなまえと俺の時間だぞ」
「もっと隠そうって気はないのかね、そういうの」

お母さんが可愛いのはいつものこととして、やっぱりお父さんがかっこいいっていうのは気の迷いだな。いい歳して恥ずかしいよ。嫌いじゃないけどね。



いつもご訪問していただきありがとうございます!これは夢なのか何なのか。とりあえずかっこいい父親かっちゃんを目指したんですが、ヒロイン要素が入りませんでした。爆豪家を気に入ってくださりありがとうございます!元々リクエスト企画からの派生なのですが、完全にへろ得になっているので、そう言ってくだるととても嬉しいです。リクエストありがとうございました!これからも「疲労。」をよろしくお願いします。

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