スプラッターグレネードサンデー




赤い血糊がぶわっと画面を汚した。赤黒い血だまりができ、その周囲には肉が飛び散っている。悲鳴やパニックによる怒声が飛び交う中、仮面をつけて鉈を振り上げている彼は聞こえているのかいないのか、ただ肉を卸し続けた。

……………ところで、どうして私は勝己くんとホラー映画を3本続けて観ているのか。そして、意外と勝己くんの顔が青く、吐きそうなほど気分が悪そうだった。

「………お前なぁ。普通、女は怖がんじゃねえのかよ」
「だって偽物だし……」

またどこのサイトから拾ってきたのかは知らないが、勝己くんは少女漫画のような展開を、世の中すべてのカップルがしてるとでも思ってるの?それに、「きゃー!」と叫ぶにはキツすぎないか、この映画は。最初はパニックホラーだったのに、何の反応まなかった私を怖がらせようと思ったのか、どんどんグレードアップしていった。「これなら泣き叫ぶだろ!!」と入れたこのスプラッターは、ごめんなさい。普通に観れる。

「っんで、こんなリアルなんだよ。きめぇ」

それでも画面は直視するんだ………。勝己くんのプライドを傷つけてしまうから、止めようとも言えない状況。どうせならラブストーリーにすればよかったのに、と思ったけど、勝己くんの性格からして、うじうじ悩む主人公を見て終始イライラしてそうだ。ホラーなら自分も観れると踏んだのだろう。

「…………」
「最後犯人も死んじゃったね」

80分の映画が終わった頃には、勝己くんはぐったりしていた。洋画はスプラッターでも、最後はアクションばりに戦闘シーンあるからなぁ……。主人公が鋸持って相討ちになる様はちょっと笑ってしまった。その瞬間、勝己くんが気持ち悪いものを見るかのような目を向けてきたことが、ちょっとショックだったし、怖かった。

「……お前ほんと暗ぇし不気味だな」

引き気味にそれだけ言った勝己くんが、地上波に切り替えると、医療番組が映った。

「ひゃっ」

思わず顔を俯けた。煙草の害はどうたら、そんな説明をしながら真っ黒になった肺の画像が出ていたのだ。気持ち悪い。生の臓器が一番気持ち悪い。

やっと声を上げた私をおもしろがってか、頬を両手で掴んで顔を上げさせられた。青い顔は変わらなかったが、口元に笑みを浮かべている。

「能面かよ、と思ったけどよぉ、意外と可愛い声出せんじゃねえか」
「ちょ、ちょっと待っ、やめ」
「どうせこれも作りもんだろ。観ろ」

いつの間にか医療ドラマに変わっていたテレビは、ちょうど手術シーンの真っ最中だった。メスを入れていくときのアングルが上からになり、徐に生々しい臓器が映る。あ、無理。無理。

「うえ…」
「吐いたらぶっ殺すぞ」

吐きはしないけど……。頑なに画面を観ようとしない私に痺れを切らしたのか、胡座をかいている勝己くんの足の上に私を乗せ、腕を拘束して手で顔を覆わせないようにした。

「人命救助の瞬間だろうが」
「無理……むりぃ………」

首を振るが、とうとう顎を掴まれ固定されてしまった。観たくないものを見せられるほど辛いものはない。涙声になってきた私をさらに追い詰めるためか、顎を掴んでいたはずの指が、ぬるりと口内に入ってきた。

「ん"っ!?」

うっかり噛んでしまわないように、舌で指を突いて抵抗するが、もう1本指が入ってきて舌を掴まれた。むにむにと押し潰し、裏を撫でる。すっかりいつもの調子だ。またスプラッター観ようよ。

「きったね」
「……っは、ぁ……」

私の頬で、ついてしまった唾液を拭う。気持ち悪いし、唾液特有のすっぱいにおいが鼻につく。やめて、と言えず、ただ黙って耐えていた。「よし」勝己くんが私を乱暴に退けて、棚からゲーム機とカセットを取り出した。ゲームするなんて意外。暢気に渡されたゲーム機とテレビを繋いでいると、勝己くんがコントローラーをがちゃがちゃ弄りながら言った。

「お前が勝ったら普通にヤって、俺が勝ったら奉仕な」
「………え、」

それ、どっちにしろ私は損じゃないですか………。

無言で抵抗してみたが、やはり効果は見込めず、決死の闘いが始まった。まぁ、勝てるはずがないよね。ゲームなんかやったことないしね?奉仕ですか?自暴自棄になるほどに、いろいろとやらされましたよ。





いつもご訪問していただきありがとうございます!最初「お家デート」というのを見たとき、「い、いつもかっちゃんの家にいるけど、いつも通りでいいんかな!?」と、ちょっと戸惑いました。いやでもいつものはデートじゃない……?デートってなんでしたっけ……。と、戸惑った結果映画はまだ観てない!ってなってこうなりました。かっちゃんも人の子(一応)なので、怖いというよりグロいのは人並みに無理とかだったら可愛いと思います。心霊系は笑いながら観そう。あんまり甘くなくてすみませんでした……。リクエストを送っていただきありがとうございました!これからも「疲労。」をよろしくお願いします。

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