私たちの輝かしき生徒様


※3万打企画「俺らのかっこいい友達様」


"カリスマ"
ーー超人間的・非日常的な、資質・能力。英雄・預言者・教祖などに見られる、民衆をひきつけ心酔させる力。

これが私の"個性"だ。まさか、物を引き寄せられる父と、人を泥酔状態にさせられる母の個性から、こんな個性ができるとは思わなかった。別に嫌いではない。けど、困ることの方が多い個性は、まず友達ができないことから始まった。

机を合わせなきゃいけないのに、「顔なんて見れるわけないじゃないかっ!」と拒否はされるし。「私も遊びに入れて」と言うと、必ずみんなで相談をされ、外で遊ぶのは危険だと御御足が汚れるだのなんだのと言われ、室内で大人しく遊んでいた。私もみんなとドッジボールしたかったのに、「当てられない」と言われ、ボールを持てば「どうぞ当ててください!」とせがまれる。何も楽しくなかった幼少期。

中学になってからは、一人で過ごすことの方が多くなった。そりゃあもちろん、友達と遊んだりしたかったが、私が近づくとみんな気を遣って過ごしにくそうだったからやめた。それに、私も一人の方が楽だった。敵に襲われないからいいと思えばマシにもなるが、人との距離が遠すぎる。遠いというのは、近いというのよりも疲れるんだなぁ。

高校に入ってからは楽しいことばかりだ。もちろん、今までと変わらない面も多々ある。が、私にも友達ができた。周りに薦められるがまま入った雄英で、一生できないと思っていた友達。同性ではなかったけど、気軽に話せるというだけで十分だ。

「よーっすなまえ」
「チーッス」
「ああ、おはよう!」

気の抜けたダルい声で挨拶をしてくるのは、この二人くらいだ。私たちを見ていた人達が、「失礼だよね」とヒソヒソ話している。何も失礼なことなどない。私はまだ何も誇らしい功績などない、ただの一般人なのだから。それよりもここ雄英には、今も偉業を成し遂げている素晴らしいヒーローたちがたくさんいるじゃないか。

………と思うのだけれどね、まずその先生方から私への態度を改めるべきだと思う。

「言うべきことなんて何もない。素晴らしい作戦だったな」
「いやいやいや。穴ぼこだらけでしたよ。もっと指導してくださいよ」
「謙遜すんな。お前はそのままで大丈夫だ」

唯一の頼みの綱だった相澤先生までこの調子だ。ドライアイなのが恨まれる。……いや、まず私に対して個性を使ってこないのがおかしい。「直視したらオーラで目が潰れるだろうが!」と真面目にキレられた。潰れないと思うぞ先生………。代わりにキャラが壊れている気はするけども。

「私だって一生徒なんですけど…」
『そりゃ無理だって話だぜみょうじ!!俺らに指導できることなんか1つもねえぞ!?なぁ、ティーチャーズ!?』
「ええ、そうね。恐れ多くて何も言えないわ」
「ムシロ教エテモラウノハ、我々ノ方ダ」
「何に置いてもみょうじさんは素晴らしいですからねぇ」

だったら、私が雄英に来た意味はなんなんだ。ヒーローたちにそう言われても何も安心できない。個性は良くとも、実力が伴えていなければ意味などないのだ。勉強だって、別に全て最初からできるようなそういう"個性"ではない。"カリスマ"は誰からも遠く、少しでも理想を外れてしまうと、強く幻滅されてしまうのだ。なのに当然のこととして理解されない。雄英に来てもこうなのだ、昔からこうなのだから、もう馴れているはずなのにな。上鳴と切島がいたから私は救われているようなものだ。





「Hey!みょうじ少女!この前のヒーロー基礎学観せてもらったけど、惜しかったね!作戦を立てるのはいいが、少しイマジネーションが足りないぞ!」
「!」

今日のヒーロー基礎学は、オールマイトが講師だった。昨日の授業は相澤先生で、特にこれといった指導は受けられなかったが、オールマイトはさらりと言った。衝撃的だった。

「先生!みょうじくんの指揮は素晴らしかったように思いますが!」
「そうですわ!みょうじさんに、ミスなどありません!」
「そうだよー!完璧だったよ!?」

みんなが私を庇う発言をぶつけるが、オールマイトと切島と上鳴は微妙な顔つきをしている。

そうか、オールマイトは"個性"云々の話ではなく、地でカリスマ性があるのだ。私のような紛い物ではない。だから、オールマイトには効かないのだ。………ならば、何故切島たちには効かないのだろう。だが、難しいことを考えるのは苦手だし、切島たちに於てそんなことを考えるのは野暮だ。彼らは私の友人なのだから。

「お、オールマイト!もっと言ってくれ!何か他にも問題点はあったはずだ!」
「ウン……それはいいんだけどね、みょうじ少女。ちょっと眩しいから抑えてくれないかな?」
「俺らも眩しいな」
「な。テンション上がってっし、何やってんだお前」

嬉しかった。ただ、ただ、嬉しかった。今までテストの成績が悪くても、怒られたり赤点になることもなく、フォローされてきたのに対して、オールマイトは問題点を指摘してくれたのだ。これだけでも、私は雄英に来てよかった!と、素直に喜んだ。

しかし、期末テストの実技試験で、「それといった課題は見当たらない」という理由がオールマイトを除く先生たちの間で可決され、免除になったことを泣きながら抗議したのはまた別の話である。



いつもご訪問していただきありがとうございます。教師陣とのリクエストでしたが、オールマイトメインになってしまいました。ご期待に添えられていなかったら申し訳ありません。"カリスマ"の個性は勉強面でも大変そうですね。相澤先生のキャラがなかなか崩しづらいので、模索しながら書きました。雄英教師陣はまだ、こういうこと言いそうとかそういうのが、へろの中ではわからないところも多いのですが、ヒロインと教師陣との関係性を書けて楽しかったです。リクエストありがとうございました!これからも「疲労。」をよろしくお願いします。


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