走って音を追った。
近付くにつれて、大きくなる。

知らない声が叫んでるのと、知多さんの叫んでる声が聞こえた。

角を右に曲がる。

「何ってオレはあのウサギ殺して」

ハナさんが頑張って掃除してくれていた場所が、ぐちゃぐちゃにされていた。

ごわごわの金色の毛をもつ、それは、百獣の王と呼ばれるにはまだ若々しいようにも思えた。

何があったのかは知らないけど、酷すぎる。

「ここの…」

「脱兎のごとく」


「ボスになる!!!」「蹴倒す!!」


えんちょーさんの脚と金色の子の拳がぶつかる。
痛そうだ、と思って顔をしかめたところで、足元からうめき声が聞こえた。

「!ふ、福本ちゃん…!?」

福本ちゃんは、シロフクロウ。多分、園の中で1番仲良くさせてもらってる…と思う。

「っ…岡芽っスか…?」

「う、ん…福本ちゃん、怪我…」

「私は、大丈夫っス…いっ…!」

「大丈夫じゃないじゃんよぅ…」

どうやら左腕を負傷してるらしく、抑えていた。
周りを見渡すと、倒れてる皆。

なんで…
なんで、金色のあの子はこんなことを…

園の中にいる皆は仲良しだと思っていたから悲しかった。それに、皆も傷付けられたので怒りもある。

なんだか私の中もぐちゃぐちゃになって、視界が揺らいだ。

「皆…!!」

痛がってる福本ちゃんをしゃがんで抱えていて、他の皆もどうしようと思っていると、背後からハナさんの声が聞こえた。

「ごっごめんなさい…私が……私っ…」

「ハナさん…」

謝ってることからすると、ハナさんの失敗か何かなのだろう。
ハナさんは自他共に認めるほどドジが多いと聞いたから。

ハナさんの目からは大粒の雫が垂れていた。
きっと、たくさん後悔して反省したのだろう。
誰もハナさんを責めることはないだろうな、と核心した。

そしてえんちょーさんと金色の子に視線を戻す。

「もういっ…ちょっ!!」

金色の子の拳がえんちょーさんの頭を掴み、思い切り瓦礫へ投げつけた。
背後ではウワバミさんとハナさんが話してる。
内容までは聞き取れないけども。

「ウサギが獅子に敵うはずねえだろ!?」

金色の子が言う。

思い切り反論したかった、けど。
怖くて声が出なかった。

ウサギが獅子に勝てないなんて、誰がいつ決めたんだ。

ただボスの座を奪うために戦う獅子と、仲間を守るために戦うウサギ。

色んなものを、仲間を背負っているウサギに敵うはずがない。
……えんちょーさんは人間だけど。






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