キスしたいだけの番犬マン

今日は仕事が休みで、読まずに溜めていた小説を読んでしまおうとテレビもつけずにソファに横になって静かな休日を過ごしていた時。

玄関の扉がガチャリと開く音がした。
一人暮らしの私の家に、勝手に作った合鍵で勝手に入る輩と言えば一人しかいない。奴だ。S級ヒーローと名高い番犬マンだ。そして所謂私の恋人だ。

「お疲れ様。パトロール終わったにしては早いね?」

目線も体も動かさずに告げると、もふもふごわごわした重たい物がのしかかってきた。言わずもがな番犬マンである。

「ちょっと…重いんだけど…退いてよ」

「……」

「…ねぇ!聞いてるの!?」

「聞いてる」

じゃあ何故退かない、と、もう読むどころではない小説から目を離して番犬マンを見上げながら言うと、返事の変わりに唇に柔いものが当たった。というか触れた。

「っ…ひ、一言何か言ってからしてよ…」

一瞬のバードキス。いきなりのことに心拍と体温が上がって手に汗をかいてきた。決して病気なんかではない。

番犬マンは表情を一切変えず、一拍置いてから「キスしてもいいか」と言って返事も待たずに再度キスをしてきた。
私の意思は無視ですか…。

「ん…ぁ、んん…っ」

恋人からのキスであるし私も彼が大好きなので拒む理由はないのだけど、先程言った通りS級ヒーローなので体力が私の比じゃない。恋人の営みの際もそうなのだけど、今の問題は番犬マンの肺活量と私の肺活量の違い。むりむりむりもう酸素足りなくなる苦しい。
ソファに押し倒されてる格好なので顔を退ける事ができないので、番犬マンをトントントンと叩いて苦しいアピールをする。

「…ふ、はぁっ…はぁ…ほん、と…ばかじゃん…!殺す気…!?」

「よだれ」

「!?」

会話に脈絡が無いのはいつもの事だけど…
急いで袖で口元を拭う。残念ながらハンカチもティッシュも跨られた状態では取れない。

「嘘だけどな」

「は、…はぁっ!?もー!何しに来たのよ!」

「なまえ補給に」

「…そ、そうですかっ…なーんでそんな恥ずかしいこと言えちゃうわけ…」

きっとこの犬の犬種はフェミニストだ。ちなみにフェミニストがどんな意味かはよく理解していないです。

「じゃあ、また行ってくる」

「…い、いってらっしゃい」

彼は私の鼻の先にちゅっとキスを一つ落として、ヒーロー業へ戻って行った。

「……小説読もう」

…この数時間後に彼がまた私の元へ訪れる事を予知しておこう。






***
番犬マンまったく分からないけど好きです。もう少し番犬マンの情報欲しい…




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