10
「っ……、ダメだ」
俺は、余裕なく首を横に振る。
吹雪は引き下がらず「何でダメなの?」と訊き
もう一方の五指も俺の手に絡めてくる。
「何で、って決まってるだろう、お前はまだ……」
「未成年とか生徒とか関係ないよ」
「……いや、しかし…」
「僕は、豪炎寺さんに恋する…ひとりの人間なんだもん」
「っ///」
俺は動揺して息を呑み、もう一度だけ含めるように訊ねる。
「さっきから言うように、俺は教師というより生身の男に近い。それにお前に本気で惚れて…」
くすっ…と吹雪は頬をほのかに染めて微笑った。
「だから、一緒に入りたいって言ってるんじゃないか」
待てよ、それはつまりーーー
惹かれ合う生身の男と16才の少年がー糸纏わぬ姿で二人きりで密室に…………しかもそれなりの覚悟を伴って…だと?
「いこ///」
誘われるまま手に指を絡めたままの吹雪を伴いバスルームに足を踏み入れる俺は、この小さな天然策士に、まさに惚れた弱みにつけこまれている感じだ。
「ん〜…ぬるすぎる……」
「フッ…お前が自分で沸かしたんだろう?」
吹雪をバスタブに浸からせて、広い洗い場の壁際のシヤワーの下で髪を洗っていると、いつのまにか近付いて来ていた吹雪の手が不意に伸びてきて泡で固まった髪を指ですいっと撫で上げてくるから、驚いて動作を止める。
「?…………」
どうしたんだ―――と
俺が吹雪を見つめると、頬を赤らめながらも背伸びして、次々と俺の髪をひと束ずつ逆立てていく。
「やっぱり豪炎寺さんなんだぁ////」
「……………」どう答えればいいのか、
一瞬息を呑んだ。
「すき同士の二人………名前は関係ない。心からそう思ってるのに…」
真剣な目で俺を見上げながらも、吹雪の声は震えていた。
「そんな僕でも、正直足が竦んじゃうよ」
だって元日本代表の豪炎寺修也と僕が仲良くお風呂とか…有り得ないでしょ。
「それは…慣れて貰うしかないな」
「…………そんな…」
「大事に…するから……」
このまま一緒に暮らしてくれないか?と訊くと、
吹雪小さな声で「…はい」と答えて俯いた。
一番聞きたかった答えが聞けて安堵する。
もう、吹雪のいない暮らしなんて考えたくない。
俺は泡で髪を立ち上げた間抜けな状態のまま吹雪にキスして…‥.シャワーの栓を再び開いてシャンプーを流し始める。
そしてまだその先をねだるような頼りない瞳を見ないように顔をそらしたまま、シャワーの中に吹雪を招き入れ身体を洗いはじめた。
「………あ…っ///」
感じやすい場所に触れるたび漏れる甘い声に掻き立てられる欲望。
「い///い………も…っと…」
洗ってやるつもりで泡立てた掌で滑らかな肌を撫でるたびに伝わる反応が可愛いすぎて
上から下へ撫で下ろしながら狭い骨盤や頼りなく勃ちあがる未熟な場所に触れ、やんわりと攻めるような刺激を与えながらも……今はまだ、労ってやりたい気持ちが辛うじて克っていた。
「…………どうした?」
悩ましげな表情で喘いでいた吹雪がふと下を見て固まっているからふと視線を追うと、スイッチが入りかけている俺のを凝視して顔をひきつらせている。
「……おっき………やっぱムリ////」
…………バカ。
と、シャワーを止めてバスタオルを手に取りながら、目を丸くしている吹雪を小突く。
これで驚いてたんじゃまだゴールは遠いぞ。
まあ、気長に……待つか。
俺もいつまで理性が保てるかはわからないが……な。
小突かれて膨れる吹雪の柔らかい頬を唇でなぞり「愛してる」と囁けば、「ぼくも」と消え入りそうな声が届いて……。
サッカーから退いて以来初めて
俺の心に温かい波紋を落とした。
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