マッチ売りの少年 | ナノ
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 6

朝早く出かけた吹雪の部屋。

一人残って里山のモニター画面を見つめている俺にsp04が近づいてくる。

「修也様、少シ ヨロシイデショウカ?」

「………ああ」

モニターには動物達の動きが光で示されているだけで、フィールドワークに出向いている吹雪の動きはもちろん映らない。それでも目を離せないまま、返事をかえす。

「修也様ノ オ部屋ノ 準備ガ整イマシタ。朝食モソチラニアリマスノデ ドウゾ…………」

「部屋?」

「ハイ。ゴ移動下サイ」




sp04に導かれるまま吹雪が用意させたという部屋に移り、そこで用意されていた朝食を摂った。

この部屋は、昨夜ふたりで身体を寄せ合い眠った部屋の倍以上の広さがあり、ベッドも大きいが…………

どうやらここが本来の吹雪の部屋のようだった。


「吹雪様ハ コノ部屋ヲ 一人デ使ウニハ広スギルト……今マデ ズット モニター室ノ裏ニ 寝泊マリサレテイタノデス」

「そうか…………」

窓もないあの部屋の、狭いベッドの中で吹雪はどうやって夜を過ごしてきたのだろう。

あの要塞で暮らしていた時も、毎晩一人の部屋に帰るのが淋しそうに見えた。

たまに俺のベッドで眠る日の、嬉しそうで安らいだ顔ときたら…………

吹雪のことを想い浮かべていたら、いても立ってもいられなくなる。

「昼食は何時だ?」

「正午ノ予定デス…………アノ、ドチラヘ?」

「じゃあ、それまでNOA内を散策してくる」

「エエッ、デハ 吹雪様ニ 外出許可ノ確認ヲ…」

「わざわざそんなことで吹雪の手を止める必要はない」

「デ、デスガ……」
「昼食時間には戻る」

「シ……修也様」
「騒ぐな。また眠らせて欲しいのか?」
「イッ…イエ ソレハゴ勘弁ヲ!」

「行ってくる」
「―――――」

真面目なsp04はきっと俺の違反行為をこっそり吹雪に通報しているだろうが……


里山で生き生きと駆け回る吹雪を物陰から遠目に見守る。

仲間たちに囲まれて楽しそうに笑う……一点の曇りもなく見えるしなやかな強さが眩しくて見惚れる。


だが、早く逢いたい想いは届かず夕食時も吹雪は俺の元に姿を現さなかった。

通常のミーティングを兼ねた食事をしているのだろうが。

だがその後も、音沙汰が無いのは…………

残業、か?



sp04も夕食を持ってきたきり、姿を見せない。


何の情報もない部屋で、苛立ちを鎮めようと用もないのに窓の外を見ていたその時…………

コン、コン とノックの音が聞こえた。


何だか妙な懐かしさを覚えてドアの方に振り向くと、カチャリとドアが開いて吹雪が顔を覗かせる。



「おつとめに来ました」

「…………は?」

電気をつけていない薄闇の中、俺たちはじっと見つめ合う…………いつかのように。

そして、吹雪はハラリと着衣を床に落とした。

そして誘うような微笑まじりに「始めるね…」と呟くから…………

「っ―――」

やめさせなければ、と思うのに言葉にならない。
そればかりか、感情が高揚し鼓動が弾むように脈打つ。

ふわりと巻きついた白い腕は慈しむように俺を包み、それから慣れた手つきで静かに俺の襟元を辿りながら前ボタンを開いていく。

そのまま俺の上半身を両手のひらで撫で下ろし、その場にすとんと跪いた吹雪は綺麗に微笑んで、俺の下肢の付け根に顔を埋めた。

「おい…」

咥えた瞬間からそこは卑猥な音をたて、吹雪は欲情した俺のを繊細な口内で巧みに翻弄していく。



小気味よい摩擦と刺激に思考を奪われ本能を掻き立てられて―――上りつめる寸前に吹雪の濡れた唇が、音をたてて離れた。

「…………吹雪………どうした?」

快楽に身を任せ立ち尽くしていた足元に崩れるように踞った吹雪に、俺はようやく声を掛ける。


大丈夫か?と華奢な肩に手を置くと、吹雪の息が荒く、苦しそうにも見えて……

「おい、吹雪…?」
「………だい…じょ……ぶ」

肩で息をつき俯き加減で胸を押さえながら、吹雪は小さな声を切れ切れに押し出した。

「ごめ…んね。胸がいっぱいで……息ぐるしく……なっちゃ…て」

「吹雪」

俺はへたりこむ吹雪の裸体を抱き上げた。そしてベッドまで運び、目一杯優しく口づけながら横たえる。

「続けるぞ………」

頷く吹雪の上に覆い被さるように抱き、瞼や鼻筋、唇を口唇で味わいながら後ろに回した指を蕾にあてがうと、既に柔かく潤っていて指に絡むように滑り込むから、驚く。

「お前、もう……」
「解してきちゃった」
吹雪は微笑んで首を縦に振った。

今は、何も考えられない。

健気に尽くす吹雪の愛情に流されてただ溺れるばかりだ。



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