3
「狭いな…」
小さめのシングルベッドを前に、豪炎寺くんは服を脱ぎ捨てる。
広いベッドじゃ、ひとりが淋し過ぎるからわざと小さくしてたんだ。
部屋を小さくしたのも、そう。
「フッ……隙間なく抱き合えて良いな」
「っ……」
豪炎寺くんは、服を脱ごうとした僕の両手首を掴み、じっと目を合わせたままベッドに押し倒してく。
漆黒の深い眸に呑み込まれそうで思わず顔を逸らせば、耳朶を柔らかく噛みながら「愛してる」と甘い言葉の不意討ち。
僕の下半身を押さえるようにのし掛かっている彼の下肢の付け根も、もうすごく硬くて熱も伝わる。
「じらさ…ないで…」
「ああ、俺も早く欲しい」
「あっ……」
シャツの胸をがばっと開かれて思わず悲鳴をあげる。
「綺麗だ……吹雪……」
思わず隠そうとした腕をほどかれ、見つめられて動けない。
「ずっと……こうしたかった」
肌に吸いつかれて、ゾクゾクと快感が全身を走った。
「はぁ……ぁん……だめぇ」
胸の尖端を交互に舐めまわす舌の動きに、下腹部で僕の性器が素直な反応を示すのを見てロの端で余裕の笑みを浮かべる彼は、それを先端から撫でるように手の内に包んだ。
「あっ……!ま…っ……て、っ………だ…め……ぁあっ」
何の準備もしてない身体を弄られることも初めてなのに……。
淫らな反応をじっくりと視線で犯されながら、愛する人の口唇で一番敏感な場所を捏ねられれば、ひとたまりもない。
「のんじゃ……だめぇ」
「………脚…開いて」
豪炎寺くんは優しく目を細めるだけで、何も聞き入れてくれない。
重しになってた彼の体がずれて、僕の力の入らない両膝を開くように左右に倒した。
「辛い……か?」
狭い空間の中で取れる体勢は限られている。
僕の脚の間を覗き込むように天地を逆にして激しさを増す愛撫は、互いが互いの性器に顔を埋める形で……
「や…だっ……はずか…し…」
熱を孕んだ下半身に与えられる刺激は、もはや前へのものか後ろなのかもわからない。
お尻を包むように支える両手の指の何本かが、ぐちゅぐちゅと音を立てて僕の中に沈み、深くなり浅くなりながら蠢くたび、上塗りされてく快楽に、思考が追いつかなくて……
「はぁ…………舐め……なぃで」
「久しぶりなのに……身体は…よく覚えてるな」
「そこ…………掻かないで…っ…はぅっ」
「…………柔らくて……指に吸いついてくる」
「や…だっ………も………はぅ…っ」
「……おい」
余裕で僕の内外を愉しむ彼が腹立たしくて、僕も顎を上げて躰を伸ばし彼の張りつめた昂りを咥える。
びく、と悦い反応と先端を濡らす液の懐かしい苦みを舌でなぞれば、身体の奥が甘酸っぱく疼き出して気絶しそうになる。
「っ………止せ」
返事の代わりに君を含んだ口内で奏でる、淫らに湿った音。
「くっ…………」
僕だって、君の弱味を知っているんだからね。
余裕なくなった豪炎寺くんは僕のロから昂りを引き抜き、体勢を戻したかと思うと一気に根元まで僕の中に挿す。
「あぁ……っ」
結合部から脳に突き上げる電流みたいな快感に僕は酔いしれ身を委ね、熔かすように濃厚な熱が僕を内側から圧し拓きながらゆっくりと律動を始める。
「ぁっ…………あっ……………あぁっ」
「っ…締め………るな…………」
「んぅ……むり……ぁあっ」
会えない間に一回り成長した彼にときめく。
逞しい腕にぐっと抱きしめられながら奥まで君を送られると、全身に麻薬のような妖しい執着が疾り、もっと君を肌の奥に擦り込んで欲しくて締めつけてしまう。
君が愛しいよ。
愛しいけど、
苦しさに潰されそう。
君は…あの女(ひと)を抱いたの?
こんな気持ちイイこと、僕じゃない人とシたの?
「くっ…………吹雪」
君の押し殺した呻き声と共に、僕の中に熱がドクドクと注がれる幸せを、体奥で恍惚と味わう。
「ふぶき………?」
「うっ……ぅっ…」
涙が…………止まらなくなってた。
それに気づいた豪炎寺くんは、少し戸惑いながらも、事後の身体を繋げたまま隙間なく抱いて。
僕の額に唇を押しつけたまま
梳くように髪を撫で続けていた。
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