マッチ売りの少年 | ナノ
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 4

ん……っ…………んぅっ…っはぁ……

今夜の準備は、ひときわ大変なもので。

シャワーで体の外側を洗って、一度精を抜いて。

持ってきた洗浄液を自分で後ろに挿入して……ナカを洗う。

それが住んで身体を拭いた後、仕上げには自分の指を潤滑剤で濡らし、思いきって自分のお尻を両側から掴むように支えて、両手の中指と薬指をナカに押し入れ開くように必死に蠢かせる。

「く…っ…………ぁ……っはぁ」

「中々思イキリガイイデスネ」

「っ……だっ…て、彼のためだもの……」

相当柔らかく解しておかないと……豪炎寺くんのが苦しくないかな……って。

「………愛……デスネ」

「……んっ……当然のつとめさ」

彼のコトを想いながらだと、指もどんどん奥まで入るようになる。

でも何だかすごく、ハシタない格好。

「sp04、君は向こう行っててよ」

「エッ!?……デ、デスガ……」

「解したらすぐに行くから」

「ワ、私ハ"家電" デスカラ。存在ハ気二サレナイデ ドウゾ オヤリ下サイ」

「だめぇ。君たまに盗撮するから。こんなハズカシい写真、豪炎寺くんに見せられたら堪んないよ」
「(ギクッ!)」

「早くっ!!出てって!」

「ハ、ハイッ―――」

一人になった狭いバスルームで豪炎寺くんの名を呼びながら自分のなかの準備を済ませる。

いよいよ抱かれるんだ……と思うと、不安と同じだけの期待もこみあげてくる。

大丈夫。君のためなら僕……何でもする覚悟はできているから。




バスルームを出ると、今日もまた豪炎寺くんからミルクココアの差し入れが届いていた。
今日は……マシュマロもついている。

「………いただきます……」
僕はマシュマロを口で溶かしながら、両手でカップのぬくもりを受け止めそっと口をつけた。

「昨夜ハ良ク寝ラレタンデスカ?」
「うん………まあね…」

sp04に訊かれて、ココアの甘さに思わず頬を緩めながら頷く。

昨夜は彼と一緒だったから……ゴウゴウ鳴る嵐の突風の音さえも全然怖くなくて。

おでこに君の唇の熱や息づかいを。

耳元には確かな鼓動を。

身体中に優しいぬくもりを…………そしてずっと髪を撫でてくれていた長い指や、温かい手のひら……

「修也様ハ、頭ヲ撫デルノガ 癖ノヨウデスネ」

「……そうなの?」

「エ工、此処ニ イラシタ 頃カラ…」

ここへ連れてこられたのが、彼が9才の時。

まだ幼さが残る彼は一人で部屋に居るのが寂しそうにしていた時があった様だ。
厳しい訓練が続いて家にも帰れない。時に目にうっすらと涙を溜めながらも歯を食い縛り、表情を変えずに……
心配して近づくsp04に気づくと、いつも丸い頭に手を伸ばし、黙って撫で続けていたんだという。

口に出せない想いが滲み出るようなその仕草が、とても印象的だったらしい―――。


「彼も…ずっと、ひとりだったんだね……」

自由もなく、弱音を吐くことも出来ず、感情を殺して、厳しい訓練を乗り越えてきた。

「ハイ。ソシテ 貴方様ニ出会エテ、修也様ハ 感情ヲ 取リ戻サレタ……ソンナ気ガ スルノデス」

「…………」


僕は、豪炎寺くんを初めて見かけたクリスマスの晩のことを思い出していた。


『お兄さん』

『火、要りませんか?』
『……要らないな』

あの日僕は、何だか哀しみに押し潰される寸前の彼の心にこっちが窒息しそうになって思わず声をかけたんだ。

『ボランティア…?』

『うん。君の心は完全に酸欠。息苦しい顔をして……生命力の火が消えそうに見えるからさ』


今、改めて思う―――。

僕は君の光になれるなら、この身を削って燃え尽きたってかまわない。

とにかく愛する君を温めてあげたい。
そのために僕の体を使ってくれるならうれしい、と。

心からそう思っていた。




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