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 3--ookami side

「ん………っ!!………ケホッ、ケホッ………ゴクン………」

……熱い……
でも、悪くない味だ……っていうかこれ……何か変だ、僕の身体の奥に火を灯されたみたいでウズウズしだす。

ええっと……一体どうなってるんだっけ?
敵は逝ったんだろうか?


「……悪いが、服を直して貰えるか」
「えっ?」
ちょ……また復活しそうになってるイシドさんのソレを慌ててズボンの中にしまって、僕は深いため息をつく。

「ねえ、まだ?………君、いつ逝くんだよ?」
精はたっぷり吐き出させたし、あとは彼が昇天するのを見届けるだけなのに。待てど暮らせど『最期』はこなくて、首を傾げる僕。

「それを俺に訊くのか?」
イシドさんは呆れ気味に「もうイった」と言い捨てた。

「えっ、どういうこと?そんなの嘘だよね?」
ああ、でもおかしい。
経過は完璧だったのにピンピンしてるじゃないか―――まさか食べ方が間違ってた?

僕は焦りながらまた辞典を開きページをめくる。
「あった!……ええと、最終……過程?」
「吹雪、そのやり方もだいたい想像がつく。もう無駄だからもうやめておけ」
せっかく僕が『人間男子を食べる』発展型を見つけて熟読しているのに、イシドさんが横槍を入れてくる。

「もうっ、静かにしてよ……」
僕はイシドさんを牽制しようとちらりと睨み、逆に押されて息を呑む。だって何だかすごくしっとりと真摯な、優しい眼差しで僕を見つめているから。

「お前は………何故俺を食べようとするんだ?」

「っ、それは……」


だめだ、ここで押されては―――
僕はイシドシュウジを睨んでハッキリと答えた。
「あなたが子供たちから楽しいサッカーを奪ったからさ!」

「……!!……」

その言葉に彼が一瞬見せた酷く傷ついたような表情が僕の胸にぐさりと突き刺さって、すごく痛い。

「……お前は俺を裁こうというんだな」
苦笑のようなため息をついて、イシドさんは呟いた。そして「それも良いな」と。

「ふ〜ん、覚悟は出来てるんじゃないか」

この人は、本当はいい人なんじゃないか……そんな迷いを吹っ切るように、僕はそっと本を閉じた。

このやり方、何だか僕の方がイタそうだなあ…。
でも、やるしかない……ていうか、ちょっと………やってみたい。


「っ……痛っ!……」
「くっ……おい、早まるな」

「止めても……ムダだから……っ」
「やめろ……と言ってる……だろ」
悶絶するようなイシドさんの声が悩ましげに絞り出されて―――よくわからないけど、今回は何だかさっきより与えたダメージが大きそう……。
今、僕は椅子に座るイシドさんの上に向かい合って、屹立するソレに狙いを定めて腰を下ろそうと悪戦苦闘している。

「うう……っ……いあっ……!」
「く……っ……待て。怪我するぞ」
「だい…じょぶ……君の先っぽヌルヌルで……だいぶ滑りいいから……っ」

ツプリ……と不思議な感覚が内側を圧し開いてイシドさんの先端が僕に食い込む。僕は我を忘れてぎちぎちの僕のナカにイシドさんを捩じ込もうとして悲鳴をあげる。

「い……っ………痛いよう」
「もう止せ。俺もキツい」

「ダメだよ」
僕は涙を浮かべながらも首を必死で横に振る。
「君を倒さなきゃどれだけの子供たちが犠牲になるか……もうこれ以上は…」
「心配するな。俺が自分で必ずカタをつけるから」

「……え……っ」

イシドさんの強い言葉に遮られて固まった僕は―――そのまま動くことができずにぽろっと涙だけがこぼれた。

僕のナカはイシドさんをまだ半分も呑み込めてないのに一杯いっぱいで。でもそれ以上に今にも張り裂けそうなのは切ないこの胸だ。

童話の世界みたいにこの赤スーツの男を丸呑みしてやりたいのにこの体たらく……そんな自分が情けなくて泣けてくるのだろうか。

ううん………この涙はそんなんじゃない……たぶん。

「吹雪……」

「……ん?」

「手錠を外せ」

「な、何いってんの!外すワケ……んっ………」

詰め寄るように顔を寄せたのが迂闊だった。次の言葉はキスに遮られていて………

「んんっ………はぁ………っ……何するんだよっ!」

身体を反らして離した唇が、何だか名残惜しい。

「吹雪…」
イシドさんの落ち着いた声が否応なしに僕の心の奥深くに響いた。
「どうしてもお前がこの方法を最後まで試したいなら……身体に極力負担かけないように俺がヤってやる」

「そん…な、だ……め……」
「食べたいんだろう?俺を全部……お前の奥まで」

なっ……何て素敵な声をだすんだよ!?
耳元で囁くその声は妖術みたいに僕の心身に効いてくる。

僕は彼と半分繋がったままで、彼に抱きつくようにして後ろの手錠に手を伸ばした。

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