上司と部下の曖昧な関係


突然後ろから何かに捕らえられて身動きができなくなった。
その無駄にでかい身長とゴツゴツした腕。黒い着物。
これクソ上司じゃねぇか!!なんだって抱き付かれてるんだ!
セクハラですセクハラ。烏天狗警察の皆さん、この人です!

「離せ…!」

腕までがっちり閉じ込められて身動きができない。一体何をしているんだ。爪を立ててみても全然効果ない。
あ、そうだ。足の甲踏んだらいいかもしれない。それ!

……ですよね。びくともしない。思いっきり踏んだんだけどな。
それより抱きしめる力が強くなって、ちょっと、痛いんですけど。

「鬼灯さん、セクハラですセクハラ!」
「セクハラって響き、なんかいいですよね」
「意味わからないです!」

なんのこっちゃ。それと耳元で喋らないで下さい。その無駄に低い声が鼓膜を刺激するから。
息かかってるし、わざと息吹きかけないでよ。くすぐったい。

もう本当に何がしたいのかわからない…。私を恥ずかしがらせようとしてるのはよーくわかるけど。
だってもう私の顔赤いし。絶対赤くなってる。あと締め付けられすぎて苦しいんですけど。それも手伝っている気がする。

「名前」
「だから耳元で喋らないでって……お?」

名前を呼ばれたと思えば腕の力が緩んでいく。やった、この隙に逃げろってことですね。
しかし鬼灯さんは私の脇下からもう一度抱きしめてきて、その体を持ち上げた。
え、ちょっと待って。なにこれ。これはまさか……!

鬼灯さんは膝を曲げながら後ろに反った。
そうすれば抱きかかえられている私も同じように視界が反転するわけで、その瞬間、私は首から地面に叩きつけられた。

そう、これがバックドロップってやつです。別名岩石落とし……って解説している場合じゃない!!
私女の子だよね。ガール?レディ?とにかくこれは挨拶代わりにする技じゃない。

「なかなか上手くいきました。バックドロップと言うそうなんですけど、別名」
「知ってます……というか私で試さないで下さい……」

瀕死状態の私はひっくり返ったまま動けない。
痛いですこのクソ上司が。部下にこんな技かけないで下さい。しかも一歩間違えれば死ぬから!
まさか抱きしめられてバックドロップされるなんて思うまい。恥ずかしさから痛みにメーター振り切れたよ。

「う…痛いなぁ…もう…」
「大丈夫ですか?」
「大丈夫に見えます?」
「それだけ動けるなら大丈夫でしょう」

くそ…。鬼め。仕事があるっていうのに朝から随分な挨拶だ。
しかもやるだけやって去っていくとか、どこの通り魔ですか。半殺しにしていく分、鬼灯さんの方が凶悪犯だ。

よし、反撃反撃。やられっぱなしはいけません。
今まで反撃って全然成功してないけど。成功してもさらに倍になって返ってくるけど。
でも意地でもやめられない。アイツをいつか叩きのめすっていう目標があるし。
バックドロップされたならそれで返せばいいよね。亡者に試したことはあるし、たぶんいける。

むかつく背中に向かって走る。
そうやって余裕こいてると痛い目見ますよ!

1/4
[ prev | next ]
[main][top]

「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -