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7

自分の性癖の事で悩んで悩んで、俺を傷つけたくないからと別れを切り出した。その時、俺もめちゃくちゃ悩んだ。悩んで悩んで、悩みぬいた。


それは、草壁ちゃんの性癖を受け入れられないことでの悩みじゃない。


それを気にして、俺のためにと身を引いた草壁ちゃんにどうやってこの手をもう一度取ってもらおうかという悩みだった。



草壁ちゃん、今、俺、やっとわかった。
君との行為が怖いんじゃない。君にされるプレイが怖いんじゃない。



過去に、君と同じことをしていた人たちと、同じにされることが怖かったんだ。



それは、単純に嫉妬。そして独占欲。



ああ、そうなんだ。俺、草壁ちゃんの恋人だもん。特別でいたいんだもん。大好きって言葉に、大好きって答えて欲しい。あんな冷たい目で見て欲しくない。いつだって、優しい目で見ていてほしい。



俺だけを、見ていてほしい。



「くさ、かべ、ちゃ…!」

それに気づいた俺は、目の前の草壁ちゃんに思い切り抱きついた。

「ちが…、ちがう、ちがうよぉ…っ!ごめんなさい…!ごめんなさい、草壁ちゃん…!」

俺はわんわん泣きながら草壁ちゃんにしがみつき、自分の思いをぶちまけた。



俺は今まで、草壁ちゃんと知り合うまでお付き合いというものをしたことがない。恋人は草壁ちゃんが初めてで、恋人同士として行為を行うのも草壁ちゃんが初めて。全部全部、草壁ちゃんが初めてで、こんなあからさまな嫉妬や悪意を誰かに向けられたことがなかったし、自分も嫉妬することなんてなかったんだ。

形は違えど、誰だって好きな人には自分が一番だって言ってもらいたい。それはあの男の子だって同じだったんだろう。好きな人の一番になりたくて、その相手に意地悪だってしちゃうかもしれない。それだけ、皆好きな人を手に入れるために一生懸命になる。



俺だって、草壁ちゃんの一番が欲しい。一緒になんてしてほしくない。誰にも渡したくない。


草壁ちゃんの胸に顔を埋めたまま嫉妬を露わに泣き叫ぶ。俺って、実はすごくめんどくさい奴だったんだ。草壁ちゃんは、許してくれるだろうか。こんな、勝手に過去に嫉妬して触れられることのできなくなってしまったこんな俺を。こんな醜い独占欲の塊のようなこの俺を。不安で不安で、涙をこぼすまま草壁ちゃんを見上げる。


するとそこには、真っ赤になって目を輝かせる草壁ちゃんがいた。



「上村先輩…!かわいすぎ…!」


俺の顔を自分の胸に埋める様にぎゅうと抱きしめる。そういう草壁ちゃんの声は、少し涙声だった。


「上村先輩。聞いて?あのね、過去はどうしたって変えられない。僕が他の子たちを抱いてきたのは事実だし、犬と称した下僕を作ってそう言うプレイをしてきたのも消すことなんてできない。でもね、先輩。
過去は消せないけど、未来は作れる。これから先、僕の全部は、上村先輩にあげる。
…過去の何倍、ううん、何十倍。
――――――一生、丸々上村先輩の物だから。」
「…!」


両手で俺の頬を挟んで視線を合わせ、微笑む草壁ちゃんの目は、愛に溢れてて。俺だけを映すその目と、極上の殺し文句に俺は涙腺が崩壊してしまった。

「草壁ちゃ…!草壁ちゃああん!うわああああん!!」

みっともなくぼろぼろと涙をこぼしてわんわん泣き叫ぶ俺を、草壁ちゃんはずっと優しく抱きしめながら『好きだよ』と繰り返してくれていた。

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