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3

最中、俺はいつもいつもいっぱいいっぱいになっちゃうからあんまり草壁ちゃんの顔を覚えてない。でも、終わった後の草壁ちゃんはいつだってとろけるように甘い笑顔を見せてくれて。



―――今まで、同じプレイをしていたのなら。草壁ちゃんは、俺とのセックスの最中、あんな冷たい目で俺を見ていたのだろうか。



途端に、すうっと足先から体温が奪われて急激に体全体が冷えていくような感覚に陥る。なんだか目の前がぐらぐらと揺れて、一人で立っていられなくなって壁を背にずるずるとしゃがみこんでしまった。

「上村先輩!?どうしたんです!?」

ひどく焦ったような副会長の声が聞こえて、俺は完全にブラックアウトしてしまった。



目が覚めると俺は保健室にいて、ベッドに寝かされていた。
最後に副会長の声が聞こえたから、きっと会長に頼んでここまで運んでくれたんだろう。副会長は華奢だもんね。俺を持ち上げらんないだろうし。そういえば同じように華奢に見えても、草壁ちゃんは結構簡単に俺を持ち上げるよなあなんて思い、ふと草壁ちゃんとの情事を思いだすと俺はまたすっと背中が冷えたのが分かった。

なんで。どうして。

今まで、草壁ちゃんとの情事を思いだして体が熱くなることはあってもこんな風に冷えたことなんてない。自分で自分が分からなくて軽くパニックになりかけたその時、保健室の扉が勢いよく開いてベッドに向かって誰かが駆けてきた。

「上村先輩…!」

ベッドを仕切るカーテンを開けて現れたのは、今まさに俺が考えていた草壁ちゃんその人だった。ひどく心配そうに悲痛な顔をして俺を見つめる草壁ちゃんに胸がきゅんとなる。
よかった。さっきのはきっと思い違いだ。

「く、草壁ちゃん…」
「先輩が倒れたって聞いて、びっくりして飛んできたんです。どうしたんですか、大丈夫?」

走ってきてくれたのだろう。乱れた息のまま俺の頬を優しく撫でる草壁ちゃんの手にじんと胸が熱くなる。

「草壁ちゃ…」
「昨日、無理させずぎちゃいましたか?ごめんね、上村先輩。」



『昨日』



その言葉を聞いて俺はまた体がすうっと冷たくなるのを感じた。

「や…!」
「せんぱ…!?」

頬に触れている草壁ちゃんお手を思い切り振り払い、布団にもぐりこむ。

怖い。怖い怖い、怖い。

「ご…、めんな、さ…、おねが、…ひと、ひとりにして…」

とにかく今は草壁ちゃんから離れたくて、がたがた震えながら布団に丸まって顔を出すことさえできない。そんな俺に何か言おうとした気配がしたけれど俺は草壁ちゃんの顔をどうしても見ることができなかった。

「…わか、り、ました…。…また、後できますね…。」

ひどくショックを受けた声色でそうつぶやいて保健室から出て行く草壁ちゃんを見送ることさえできずにただ俺は布団で小さくなることしかできなかった。

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