×
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -




4

言った。ついに、言ってしまった。悟の答えをドキドキしながら待っていると、悟は眉間にしわを寄せ、俺の顔から視線を逸らした。

そして



「は?今さら何言ってんだよ。そんなもん改めて言う必要もないだろ。それよりさ、こないだのゲームさ…」



悟が帰ってから俺は一人ベッドの上で呆然と転がっていた。あの後、悟とどんな会話をしたのか全く覚えていない。ただただ俺は、悟の答えが頭から離れなくて。

賭けに、負けてしまった。

悟の口から吐かれた至極めんどくさそうに言い放たれた言葉が俺の心に大きな風穴を開けてしまったみたいだ。

『改めて言う必要もない』

悟にとって、俺はやはり特別な存在なんかではなかった。
本当は、悟がほんの少しでも俺に対して幼馴染以上の感情を持ってくれているんじゃないかって期待していたんだ。だって、悟はすごくモテて、それこそあいつの言うように相手なんてより取り見取りなんだし悟の相手ならしたいと言うやつはいくらでもいるだろうから。それでも、悟は俺以外のセフレは絶対に作らなかった。

だから。あいつの言うように、俺は特別なんじゃないかって。
心のどこかで、期待していたんだ。


でも、もうだめだ。俺は、賭けに負けてしまった。特別なセフレなんかじゃなかった。悟にとって、セフレと言う言葉さえも口にするのもめんどくさい、ただの性欲処理だった。

「…悟…」

明日、あいつに結果を報告しなけりゃいけない。そして、それを最後に俺はもう二度と悟の傍にいることは許されないのだ。

「悟、悟…、さと…っ…、」

何度も何度も、悟の名前を呼びながら俺は泣き続けた。


次の日、俺がそいつに結果を報告するとそいつはひどく嬉しそうな顔をして笑った。

「約束だよ。もう二度と悟君に近づかないで」
「…わかった」

ご機嫌で教室に戻っていくそいつの後ろ姿を見つめながら、ため息を一つ吐く。

『じゃあまた後でな』

朝、登校してお互いの教室へ別れる前に悟の言った言葉。
悟、ごめんな。『また後で』はもう永遠に来ないんだ。


それから俺は、約束通り徹底的に悟を避けた。教室では、いつもなら休み時間などに現れる悟があいつが上手く悟を俺のところに来させない様にしているようで姿を見ることはなかった。放課後も、俺はHRが終わるといち早く駆け出す。家に帰ってからは、居留守を使った。
いつも隣にいた悟がいない。ただそれだけで、ぽかりと大きな空洞が心にあいてしまったみたいだ。


…悟の近くにいられないのは、寂しい。でも、どこかほっとしている自分がいることに気が付いたのは悟を避けはじめて一週間たってからだった。あのまま関係を続けていれば、俺はいつか心が壊れてしまっていたかもしれない。

悟に告白して、振られる勇気もないくせにセフレと言う関係を拒否もできなかった。俺は弱虫で、卑怯者で。今回、自分の意志ではなかったとはいえ悟の口からはっきりとあいつにとっての俺の存在と言うものを聞くことができた。傷つかなかったと言えばうそになるけれど、あのまま幼馴染というだけで性欲処理に使われていつか恋人を見せられるくらいなら、これでよかったんだ。

あれから、悟がよくあの子と一緒にいるところを見かけた。もう恋人になったんだろうか。そう考えるだけで涙が勝手にあふれてくるけれど、あの子は悟に嫌われることを恐れずに自分の気持ちをはっきりと悟に告げた。悟を手に入れるために必死に努力をしていた。自分の立場がなくなることを恐れて、何も行動しなかった俺よりもあの子の方が悟の近くにいる資格がある。俺は悟と離れられるきっかけをくれたあの子に感謝した。



それからまたしばらくたったある日のこと、日直のために一人放課後の教室に残っていた俺は日誌を書いていた。がらり、と教室の扉のあく音がしたけれど、どうせ誰かが忘れ物でも取りにきたんだろうと顔を上げなかった。
日誌を書いている手元に影が落ちて、誰だろうと顔を上げた瞬間、俺はさっきの音でなぜ顔を上げなかったのかと後悔した。



目の前にいたのは、悟だった。

[ 37/215 ]

[*prev] [next#]
[mokuji]
[しおりを挟む]



top