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3

「うそつき」


俺が例の子に呼び出しをくらったのは次の日の放課後だった。教室にやってきて、無表情に俺を見つめて教室の入り口で首だけでついてこい、と指示された。
ついた先の校舎裏で、その子は腕を組んでひどく俺を軽蔑した眼差しで睨みつけたかと思うと冒頭の言葉を吐いたのだ。


「君、悟君とはただの幼馴染だって言ったよね。じゃあ、どうしてあんなことしてるの?」


その子の言葉にさっと顔から血の気が引く。『あんなこと』とは、十中八九昨日の教室での情事の事だろう。だからやめろって言ったのに!
心の中で悟を責めて、とっさに思い直す。いや、嫌がっても最終的に受け入れたのは俺だ。

「…でも、付き合ってないのは本当だ」
「なにそれ?じゃあただのセフレ?信じらんない。悟君趣味悪い。よりによってあんたみたいなの選ぶだなんて、よっぽど誰でもいいのかな?」
「悟はそんな奴じゃない!」

そいつの言葉に思わずかっとなって言い返すと、そいつは心底見下した目を向けてきた。

「何ムキになっちゃってんの。…ああ、そうか。悟君はセフレのつもりでも、あんたは違うってことね。」

ずばりと俺の本心を当てられて、ぐっと唇を噛む。
黙ってうつむく俺に、そいつはひとつの賭を持ちかけた。


俺の気持ちはわかった。でも、自分が好きな人に抱かれたいからって真実を告げずに傍にいるのはずるいんじゃないかと。それなら自分だって悟が好きなのだから、俺になりかわって自分がその位置にいてもいいじゃないかと。

「賭けをしようよ。君は別に悟君に自分の気持ちを告げなくてもいい。振られてはっきりと拒否されたくないから今の地位に甘んじてるんでしょう?
悟くんはモテるけど、体の関係を持ってるのって君しかいないんだよね。『体だけでもいい』って言う子、何人も断られてるし。
セフレが君一人ってことは、君はまがりなりにも特別なんだと思う。君みたいなやつ、何がいいのかさっぱりわからないけどね。でも、それを悟君から証明することが出来たら、傍にいることは認めてあげる。ただし、彼に僕って言う恋人ができるまではね。逆にもし、悟君から君が特別だと証明してもらえなかったら、彼から離れて二度と近づかないで。僕にその場所を譲りなよ。わかった?」


おそらく、セフレと言う立場になれば落とす自信があるのだろう。はっきり言ってどちらの条件も俺にとっては最悪な条件だ。
『特別なセフレ』だと証明してもらうか、『ただのセフレ』なのかをはっきりさせなきゃいけないなんて。どちらの答えをもらっても、結局は俺は悟にとってはただの性欲処理に過ぎないんだと思い知らされなきゃいけない。でも、俺はその条件を飲むしかなかった。なぜなら、断ればそいつに俺が悟を好きなことをばらすといわれたからだ。



「どうした?なんか上の空だな」

悟がテレビを見ながら、俺の隣で不思議そうに問いかける。
帰ってきてからいつものように悟がうちに来て、二人でだらだらと過ごしながら俺はなんて話を切り出せばいいのかすごく迷ってしまっていた。
今しかない。
ごくり、とつばを飲み込んで、ぎゅっと膝の上で拳を握る。


「なあ、俺ってお前にとって何かな…」


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