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2

松方はとても明るく気さくで、あっという間に学園の人気教師になった。とても面倒見がよく、頼りにされている。松方本人にもその自覚はあった。
そんな松方は、ただ一人とてもおっちょこちょいなのに自分を頼らない生徒がいるのが気になった。


藤井広大。


とても高校生とは思えないほどの小さな体に女の子かと思うほどのかわいらしい顔立ち。何事にも一生懸命で、でも空回りするその姿がとてもかわいらしい。

困ったことがあるなら、いつだって助けてやるのに。

そう思いながら藤井を観察して、ふととあることに気がついた。確かに藤井はドジである。だが、それをさり気なくカバーし、本当に危なくなる前にそれは絶妙なタイミングで助けの手をさしのべる人物がいた。


田上祐輔。


背の高いのをのぞけば、至って普通の少し無口な男子生徒である。


松方は、考えた。
確かに藤井は周りの皆が思わず手を差し伸べたくなるほどに愛らしい。だが、いつだって藤井を助けるのはこの生徒だけ。これは、よくないんじゃないか。



その日の放課後、松方は藤井を呼び出した。



「やあ、藤井。すまないな急に呼び出したりして」
「だ、大丈夫です!先生、何かご用事あるですか?僕、何でもするですよ!」

うん!と胸の前で小さくガッツポーズをし、気合いの入った顔で大きくうなづく広大を見て松方の顔が思わず綻ぶ。

「そうか。じゃあ先生の話を聞いてくれるか?実はなあ、田上のことなんだが」
「ゆうの…?」

田上の名を出したとたん、とても心配そうに顔をしかめる広大に松方は少し胸がもやっとする。

だめだな。藤井はどれだけ田上に依存してるんだ。

「あのな、藤井。お前はいつも困ったことがあると田上に助けてもらうだろう?先生な、あまりそれはよくないんじゃないかと思うんだ。」

広大は、言われた意味がわからないのかきょとんとして首を傾げた。

「いつまでも田上と一緒にいるわけにはいかないんだ。あいつだって、他にやらなきゃいけないこともある。でもな、ここでお前のことばかりしてやってたら、あいつは自分のやりたいこともできなくなるし、お前だってあいつがいなきゃ何にもできなくなっちまうぞ?
そうなったら、この先どうするんだ?もし田上が遠いところへ行ってしまったり、彼女ができたりした時に困るのはお前だろ?」


松方の言葉に、広大の顔がみるみる真っ青になっていく。

ゆうが、いなくなる?
彼女ができる?

その事もショックだったが、何より広大の心を抉ったのは、その前。



――――ゆうは、僕といたら自分のやりたいことができない?



広大の様子を、自分の言ったことで目が覚めて焦っているのかと勘違いをした松方はにこりと笑ってぽんと広大の肩を叩いた。


「大丈夫だ。藤井、心配するな!先生が、手伝ってやるから!」
「せん、せいが…?」


不安そうに見上げる広大に、松方はどんと自分の胸を叩く。


「ああ、今度からは先生がお前を助けてやる!困ったことがあるなら、相談にも乗るしいつだって相手をしてやるから!
だから、藤井は少しずつ田上から離れる努力をしような!」


満面の笑顔で言う松方に、広大は小さくこくりと頷いた。

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