感想 


55.恋月想歌
 2011/05/30 - 辛口感想
ジャンル:異世界恋愛ファンタジー
長さ:短編


いいかげんなあらすじ:
聖女によるヴァンパイア退治の伝説が残る村、イーゼ。
イーゼの教会のシスター・リムは、調べ物をするために村を訪れた美しい青年・レストに出会う。
レストはリムに、ヴァンパイア伝説の説明を求めてきて……。


 個性がないせいで印象に残らない
 盛り上がるシーンがない
 文章の流れがよくて読みやすい
 たまに言葉が足りない





定番かつ人気の吸血鬼モノです。
吸血鬼モノの人気の理由は、中二病的な要素やエロとの相性のよさにあると、私は考えています。
が、そんな不純な考えを抱いていることが恥ずかしくなるくらい、純粋できれいな作品でした。

変なクセがなく、文章も読みやすいため、あっという間に最後までサクサクと読めました。
一方で、ストーリーの盛り上がりや個性に欠けるため、印象に残らなくもあります。


 個性がないせいで印象に残らない

ストーリーもキャラクターも設定も、しっかり「定番」を押さえているため、万人受けしそうな作品です。
しかし、どの要素もありがちで、個性がありません。
ストーリーは先が読めるし、キャラクターや設定にも意外性がないのです。
そのため、なにひとつ印象に残りませんでした。

また、ストーリー、キャラクター、設定、文章、いずれの要素についても、破綻はありません。
しかし、すべてが無難すぎて、おもしろみに欠けています。
基本はきちんとこなせているのですが、「個性」という+αがないせいで、特徴のない作品になってしまっているのです。
この無難さも、作品が印象に残らなかった一因だと考えられます。


 盛り上がるシーンがない

印象に残らなかった原因としては、ストーリーの盛り上がりに欠けていた点も挙げられます。

この作品では、レストとリム、レストとマリア、ふたつの恋が扱われています。
しかし、どちらも書き込みが中途半端で、ドキドキしたり、胸が締め付けられたりするようなシーンがありませんでした。
そのため、ストーリーのメリハリに欠けていたのだと考えられます。

レストとリムについては、たまたまシスターをやっていたリムが、レストの最期を看取っただけなので、悲劇性に乏しいです。
また、レストとマリアに関しては、愛を育んでいった過程に関する、具体的なエピソードが書かれていません。
そのため、それぞれの恋の結末について、なんの感慨がわきませんでした。


 文章の流れがよくて読みやすい

「印象に残らない」とグダグダ書きましたが、不満点は特にありません。
破綻がないだけではなく、文章がとても読みやすいので、まったくストレスを感じなかったからです。

とにかく、文章の流れがいいです。
文章同士の繋がりがしっかりしていて、途切れることがないので、スルスルと自然に頭へ入っていきました。

また、しっかりとした文体ですが、使われている言葉が平易なため、文章の硬さもちょうどいいです。
情景や人物の描写もきれいなため、少女小説として適切な文体ではないでしょうか。

重要なシーンで背景描写や心理描写を増量することで、文章にメリハリが付けば、さらにレベルの高い文章になる可能性が考えられます。


 たまに言葉が足りない

ていねいな文章ですが、言葉の足りていない箇所がたまにありました。
言いたいことはわかるのですが、少々腑に落ちないのです。
そんなわけで、軽く重箱の隅を突っついてみます。

・12ページ目
垣間見た超常的な力は、人では到底太刀打ちはできそうもない。
→レストの超常能力は、そこまで大した力には見えませんでした。

・21ページ目
今でこそ廃れた奴隷制度だが、資料は残されている。それを見れば、奴隷であったマリアが非人道的な扱いを受けていたことは想像に難くない。
→資料を見たことがないので、想像できません。

他にも数ヶ所、腑に落ちない箇所がありましたが、割愛させていただきます。


「個性がない」と文句を垂れましたが、妙な要素が加えていられていないので、変なクセがありません。
また、きれいに完結している短編なので、安心して読めます。
文章も整っているので、定番の要素で固められた吸血鬼モノを求めている方にオススメの作品です。


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