感想 


52.月の人
 2011/04/19 - 辛口感想
ジャンル:平安風恋愛ファンタジー
長さ:長編(完結)


いいかげんなあらすじ:
光り輝く竹から生まれた娘・かぐや。
美しく成長したかぐやは、求婚者によって危機に陥っていたところを、帝によって救われる。
かぐやと帝は互いに恋に落ちるが、かぐやの出生の秘密が、ふたりの恋路を妨害する。


『竹取物語』とほぼ同じ内容の序盤が退屈でした。
また、登場人物や文章が薄味なため、資料を読んでいるような印象を受けました。
中盤以降の展開は、こまめに波乱が仕込まれているため、おもしろかったです。





主人公の恋愛だけではなく、出産まで扱った、少女小説らしい作品です。
有名な『竹取物語』がベースであるため、古典の偏差値が30台だった私でも、問題なく楽しめました。


しかし、序盤は『竹取物語』とほぼ同じ展開で、よく知っている話なので、読んでいて退屈でした。
オリジナルの要素が少ないせいで、新鮮味に欠けていたのです。
中盤以降はおもしろいので、すごくもったいないです。


ストーリーも文章も明確で読みやすいのですが、灰汁がなさすぎます。
そのため、それなりにおもしろいけれども、味気ない印象でした。

まず、登場人物の味付けが薄かったせいで、誰にも思い入れが生じませんでした。
全員テンプレート的なキャラクターであるため、意外性や人間味に欠けているのです。
登場人物の内面の掘り下げが足りなかった点も、人物が薄味だった原因のひとつです。


また、描写の少なさが原因で、文章も薄味でした。
文章そのものは、理路整然としていて読みやすいです。
しかし、人物造形の淡白さも相まって、資料を読んでいるような気持ちになりました。
文章に小説らしい躍動感がないのです。

おそらく、人物の内面・外面についてあまり描かれていないせいで、動きのない文章になってしまったのでしょう。
頻繁に現れる長い台詞は、口調や表情の描写を伴っていないため、感情がこもっていないような印象を受けました。

さらに、人物だけではなく、背景の描写も不足しています。
作中の時代らしさや、舞台の華やかさ、季節感がほとんど表現されていないため、物足りなさを覚えました。

けれども、恋愛シーンに限っては、自然でテンポのいい文章で書かれています。
ひとつひとつの台詞が短く、人物の様子や気持ちについて、台詞の合間にしっかり描写されているのです。
そのため、文章が生き生きとしていました。


ストーリーに関しては、中盤以降は程よいタイミングで波乱が仕込まれているため、退屈せずに読めました。
主人公たちの幸福が長く続かないおかげで、メリハリのあるストーリーに仕上がっているのです。
また、物語がしっかりとまとまっているため、読後感もいいです。


文章も内容も読みやすく、長さも手ごろです。
そのため、完結済みの少女向け和風ファンタジーを求めている方に、オススメできそうな作品です。


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