04
何度ブリーチを繰り返したのか問いたくなるくらいに、綺麗に染められた金色の髪。
サラサラと横に流していた前髪は、睫毛の上に、重ために切りそろえられて。
いつもはノーメイクの顔も、ばっちりとメイクが施されていて。真っ白な肌にピンク色のチークが映えすぎだというくらいに乗っている。
膝の遥か上にスカートの裾。
地味で、真面目そうで、校則に寸分も逆らわずにいた八尋が。
そんな面影を全く消し去った姿で、俺の前に立っていたのだ。
「なにやってんだよ…」
「先輩に近づこうと思って、」
「は…?バカじゃねぇの」
「バカです…。でも、それくらい安藤先輩が好きなんです。私は、安藤先輩にならどう染められても構いません。汚れたっていいって思ってます」
「………」
「本気なんです。諦められないです。だから、見た目も…、こんなふうにして来たの」
泣きそうに顔を歪ませて、八尋は俯いた。
「こうすれば先輩は…、私を、傍に置いてもいいって…、思ってくれると思ったから」
なんで俺の気持ちがわかんねぇんだよ。
どんだけ必死でお前のこと突き離したと思ってんだよ。
見た目とか、そういう問題じゃないだろ。
誰もこんなことしろなんて、頼んでない。
「マジで…、呆れた」
シュシュの付けられた八尋の手首を掴んで、引っ張り寄せる。
細い体が宙を浮くみたいに、簡単にこちらへ引き寄せられて、彼女は俺の腕にすっぽりと収まった。
八尋穂奈美。
正真正銘のバカ。
でも健気で、一途で。
俺だってこいつのこと、諦められるはずなんかない。
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