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side 竜輝





八尋を暴走に連れて行ったのは、俺を嫌いになってほしかったからだけじゃなかった。

ケリをつけたかったのだ。自分の気持ちに。


八尋は絶対に、俺たちみたいな集団に巻きこんでいい相手じゃない。

それをわかっていながら、どんどんあいつを好きになる自分が嫌だった。

こんな俺のことをあいつに「いい人」だと思い込ませているのも嫌だった。


俺の醜態を晒して、嫌いだと罵ってもらいたかった。

八尋に幻滅されれば、俺の諦めもつくと思った。


でも八尋は、それでも俺を好きだと泣いて。

そして俺には、そんな彼女を最後まで突き離し切る度胸がなかった。





最初はなにも考えていなかった。

ただ、俺のテリトリー内で繰り広げられていた醜い弱い者いじめが嫌で、その標的を救ってやりたかっただけだった。

でも八尋は、俺が目を離すとすぐに誰かにイジメを受ける。そしてひとりでそれを抱え込む。

誰かが守ってやらないと、きっと壊れてしまうと思ったのだ。



俺とは住む世界の違う女だったということに気付いた時には、もうどうしようもないくらいにあいつを好きになっていた。

いや。好きだからこそ、傍に置いておけないと思うようになった。



それなのに八尋は、こんな俺を好きだと言ってくれた。

俺がどんな奴で、どんなことを裏でやっているのかも、何も知らないような顔をして。

俺のことを、まるでスーパーマンか何かと勘違いしているような顔をして。




違う。

俺は、人間の底辺なんだ。




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