04
真っ暗やみの中だから泣いているのはバレないと思ったけれど、先輩はすぐに私の異変に気づいたらしく、今度は顔を覗き込んできた。
先輩のそんな優しい一挙手一投足が、私の心をギシギシ傷めつけているなんて、きっと先輩は知らない。
だからこそ、先輩は優しい人なのだとまた確信する。
「泣くな」
「…っ、」
「おい」
「…ひ、ぅ」
「はぁ…」
溢れ出る感情は、先輩がどんなに制しても止められなかった。
先輩はため息のあとに小さく舌打ちをした。静寂にその短い音はやけに響いた。
「八尋」
「ふ、…は、い」
「これ聞いたら、泣きやめ」
「…、え?」
唐突に先輩はそう言うと、間髪入れずに言葉を続けた。
「俺だって、お前が俺の知らねぇクラスの奴にベタベタされてたの、気に食わなかったよ」
「……っ、」
「だから今日も、たまたま教室行ったらお前が言い寄られてたから、割って入ったんだろーが」
「……」
「気付け。ばか」
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