03
「俺は、誰かに命令されて暴走したりしてるんじゃない。好きでやってる」
「…はい、」
「はっきり言って俺、人間として最低だよ?」
先輩の嘲笑を含んだ声に、悲しくなる。
どうして先輩にこんなこと言わせてるんだろう、私。
先輩は最低なんかじゃないです。
そう言いたかったけれど、言ったところで何の解決にもならなさそうだったから、言葉を飲み込んだ。
すると次の瞬間に、ふわりと肩に温かいものが触れた。
驚いて目をやると、それは先輩の右手のひらだったのだ。
「こんな奴だから…。早く嫌いになって。俺のこと」
その一言に、察する。
先輩は私を諦めさせるために、自分の悪い部分を見せたんだ、と。
きっとあの告白の日、私が「もし私が不良だったら…」みたいなことを言って先輩に縋りつこうとしたから。
先輩はずっと、私のことを気にしてくれていたのだろう。
それがわかると、涙が込み上げてきた。
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