04
「、っ先輩!」
「…………」
先輩は何も言わないまま、私を引っ張って教室を出た。
私たちに気付いた人たちは全員、こちらに注目していた。恥ずかしくて俯く。
…どこ行くつもり?
あんなふうにふっておいて、今更何の用事があるというのだろうか。
でも掴まれている手首は熱くて、まだこんなにも好きだと実感するとなんだか悲しくなって、ジクジクと心が痛む。
久しぶりに見た先輩の背中は相変わらず広くて。やっぱりこの体に守られたいと思って泣けた。
「せんぱい…っ」
「なに」
「痛い、」
私が泣きそうに震えた声を出したからなのか、先輩はようやく返事をしてくれた。だけど足は止めないまま歩き続ける。
「…悪い」
そうは言いつつも、手は放してくれない。先輩は何を考えているのだろう。
そのまま大人しくついて行くと、先輩は屋上まで私を連れていった。
ゆっくり扉が開く。
久しぶりに見た屋上からの空は、今日は不穏に雲っていた。私の気持ちをそのまま表しているみたい。
先輩は給水塔の裏に私を引っ張った。そこでようやく手を解放する。
この場所は嫌いだ。
埃っぽくて、じめじめしていて。
なにより、先輩にふられた場所だから。
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