03




よく考えてみる。

彼の机の上に私のノートがあったなんて、おかしな話だ。

名前の書いていないノートの字を見ただけで私のものだとわかったというのもおかしい。


勝手に私の机から持ち出したのだろうか。

この執拗さも、変だ。


これもまた、新しい嫌がらせ…?




「八尋さん暇な日とかある?」

「…いや」

「ふたりで遊ぼうよ」




耳の近くで、誰にも聞こえないくらいのひそやかな声で囁かれた。

ぞわりと鳥肌が立つ。

いや。

気持ち悪い。






「八尋」






やめて、と言おうと顔を上げたら、そこには彼の他に見覚えのある人が立っていた。

私の名前を低い声で呼ぶ。




「…安藤せんぱ、」

「お前誰?」




安藤先輩。

逢いたくて逢いたくて仕方なかった人が、今なぜか目の前にいるのだ。

突然のことに頭が真っ白になった。



私が名前を呼び終わる前に、先輩は私に話しかけていたクラスメイトに問い掛けた。

ビクリと、彼の体が強張るのがわかる。




「…八尋に嫌がらせ?」

「いや…そんなつもりは、」

「そんなことしたら殺すから」




全く表情を変えずに言い放った先輩は、私の手首を乱暴に掴んだ。




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