02
「でもな」
私が鼻をすする音の響く屋上で、先輩の躊躇ない声が空を切った。
急なことに驚いて、思わず呼吸をするのを忘れそうになる。
ゆっくりと首を傾げると、先輩はやっぱり躊躇わずに言葉を紡いだ。
「八尋とは付き合えない」
……今、なんて?
「お前は俺にとってそういう対象じゃない」
「……、」
「つか、それよりも…、」
不意で、驚いて、先輩の言葉が全く頭に入ってこない。
受け入れられなくて、理解できなくて、先輩の顔をきっと縋るように見つめていたのだと思う。
先輩はそんな私から目をそらした。
「俺とお前は違いすぎる」
だから無理だ。
先輩はそう加えて、性急に立ち上がる。
陽の暮れ終わった空に吹く風は、少し冷たかった。
涙の痕がひんやりとする。
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