03
先輩に、どんなふうに告白すればいいのかすごく考えた。
伝えたいことはたくさんあるけど、言葉がまとまらない。
口下手だから、もしかしたら緊張のあまり変なことを口走ってしまうかもしれないと思うと、それだけで緊張してしまう。
明日は言おうと思っていても尻込みしてしまって、先輩の姿を見かければ逃げてしまう。
屋上まであがっても、そのドアノブをひねることが、しばらくは出来なかった。
そんなある日の夕方。
「おい」
少しだけ懐かしい声色に呼び止められる。
本当は今すぐに走って逃げだしてしまいたかったけれど、思いきって振り返った。
そこにいたのは、安藤先輩。
少し前まで、姿を見れたら嬉しくて仕方なかった彼。
今は、ただただ緊張するだけ。
そんな私の心境など知る由もない先輩は、私にゆっくりと近づいた。
「八尋。お前最近俺のこと避けてない?」
先輩は、余計な前置きをすべて省いて、そう私に問いかけた。
ぐっと言葉に詰まる。……わかってたんだ。
「あの…、」
「俺なんかしたか。つーかもしかしてまた誰かになんかされた?」
「いえ違います!先輩が嫌いだから避けてるとかじゃ、なくて…」
先輩の顔がみるみる曇る。
もしかして今、墓穴掘ったかも…!
どうしよう、なんて言い訳しよう。頭の中は真っ白で、続く言葉が見つからない。
「…やっぱお前おかしいわ」
「え、」
「ちょっと来い」
「わ、ちょっと、先輩!」
先輩は私が肩から下げていたかばんをぐいっと引っ張った。
そのまま先輩の歩む方向に、体はどんどん持っていかれる。
どうしよう。どこ行くの。
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