04
連れていかれたのは屋上。
今日も空は快晴で、向こう側に落ちていく夕陽が見えた。
先輩はドアを乱暴に閉めると、給水塔の裏側に私を引っ張った。
そして無理やり座らせられる。やっぱりここは、埃っぽい。
「ここなら話せるだろ」
「………」
「なにされた」
…先輩。
完全に何か勘違いしてます。
きっと彼は、私が再びいじめに遭っていると思っているんだろう。
そこまで真剣に私のことを心配してくれているなんて、ますます先輩を好きになってしまう。
そしてますます、言いたいことが混濁する。
好きだけじゃ足りない。
ありがとうも、ごめんなさいも、守ってほしいも、側にいたいも、全部先輩に伝えたい。
だけどそれを簡潔にまとめる能力と、しっかり伝える技量が、私にはない。心の準備も勇気もない。
…言えないよ、
「八尋」
「…はい」
「俺のことが信用できねーのかよ」
違うんです先輩。
好きなだけなんです、先輩が。
でもそれを言おうと覚悟した途端、緊張しちゃって。
って、言えるわけない…!
「信用…、してます」
「じゃあなんでも話せよ」
「…でも」
「俺が守ってやるから」
いつもクールな先輩の表情が、少しだけ歪む。
言うことを聞かない子供をなだめるように。
そして、口を割らない私にちょっとだけがっかりしているように。
初めて見たその表情に、心がぐらりと揺れた。
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