04




連れていかれたのは屋上。

今日も空は快晴で、向こう側に落ちていく夕陽が見えた。


先輩はドアを乱暴に閉めると、給水塔の裏側に私を引っ張った。

そして無理やり座らせられる。やっぱりここは、埃っぽい。




「ここなら話せるだろ」

「………」

「なにされた」




…先輩。

完全に何か勘違いしてます。




きっと彼は、私が再びいじめに遭っていると思っているんだろう。

そこまで真剣に私のことを心配してくれているなんて、ますます先輩を好きになってしまう。

そしてますます、言いたいことが混濁する。



好きだけじゃ足りない。

ありがとうも、ごめんなさいも、守ってほしいも、側にいたいも、全部先輩に伝えたい。

だけどそれを簡潔にまとめる能力と、しっかり伝える技量が、私にはない。心の準備も勇気もない。



…言えないよ、




「八尋」

「…はい」

「俺のことが信用できねーのかよ」




違うんです先輩。

好きなだけなんです、先輩が。

でもそれを言おうと覚悟した途端、緊張しちゃって。



って、言えるわけない…!




「信用…、してます」

「じゃあなんでも話せよ」

「…でも」

「俺が守ってやるから」




いつもクールな先輩の表情が、少しだけ歪む。

言うことを聞かない子供をなだめるように。

そして、口を割らない私にちょっとだけがっかりしているように。



初めて見たその表情に、心がぐらりと揺れた。



[ 25/51 ]

[*prev] [next#]
[mokuji]
[しおりを挟む]



「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -