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あの日以来、私はイジメをしていた先輩たちにとって、安藤先輩と同等の脅威となったようだ。

毎日食らっていた呼び出しは、嘘のようになくなった。

安藤先輩の存在は、それほどまでに偉大だったのかと、知らなかった自分に驚いた。



屋上へ上がれば、いつも安藤先輩はいる。

たまに先生に用事を頼まれて職員室へ行った時、怒られている先輩を見ることがあるが、先輩は先生の話なんか全く聞いていないような顔をして、いつもぼんやりどこかを見つめていた。




「八尋」




学校で私を見つければ、先輩は必ず声をかけてくれる。

そしてその声に振り向いた私を、別ににこりとするわけでもなく、眉をひそめるわけでもない表情で迎えてくれる。




「安藤先輩。こんにちは」

「今日はどう」

「全然、なにもないです」

「それならいいけど」




先輩は、私がいじめを受けていないか心配してくれているらしい。

そんな先輩の気遣いが、いつもすごく嬉しかった。

でも、毎日私のことなんかで気を病まれるのも少し心苦しかった。




「先輩。私もう大丈夫ですから、心配しないでくださいね」

「……」

「本当にいろいろありがとうございます」

「じゃあ、またなんかあったら言え」




そう言い残して去っていく背中を見つめる。

広い背中。その背中を見つけるのが、今の私の得意技だ。



先輩を好きな気持ちは、どんどん膨らんで。

私の心の中だけでは、収まりきれないくらいまでに大きくなっていた。




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