04
さっきから何も言わないで先輩は空を見上げている。
つまさきでコンクリートをトントン蹴りながら。
きっとここは先輩のテリトリーなんだと思う。
私は早いところ退散しよう…。でも授業をさぼってしまっている手前、行くところがない。
本当に、保健室にでも行くか。
「あの、じゃあ失礼します」
「…え?さぼってたんじゃねーの」
「あ、や…まぁそうなんですけど」
「今から授業出んのか」
「いや…違いますけど」
しどろもどろする私に、先輩は不思議そうな顔をする。
でも少しすると、興味がなさそうにまた空を見上げた。
「居ていいよ、別に」
「え?」
「授業終わるまで居たらいいじゃん」
ここ最高に気持ちいいしな、と先輩は加えて、その場でぐんと伸びをした。
まさかこんなこわもての先輩から、そんな優しい言葉が出てくるとは思わなくて。
硬直したまま先輩の横顔を見つめてしまった。
「…なに?」
「え!いや…あの、お邪魔では…」
「別に」
先輩の横顔は男らしい。
なんというか……きっと喧嘩なんかが強いんだろうと思うけど、男気みたいなものを感じる顔をしている。
私には、そんな勝気な一面なんて微塵もないから、先輩のそんな部分にとても憧れてしまう。
一瞬で好きになったのも、きっとそういうわけなんだろう。
風で、ツートーンの髪がそよそよ揺れる。
ワックスで整えてある割には、案外さらさらなんだなー…と、そこに触れたくなったりした。
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