03
ギギギ、と壊れたおもちゃみたいに首を回す。
すると視野の隅に、見たことのあるツートーンが飛び込んだ。
異様に目立つ、茶色と黒。
「あの…安藤、先輩ですか?」
「…俺のこと知ってんの?」
彼は怪訝そうに眉をひそめてこちらを睨んだ。
…2度目ましてだ。
安藤先輩はじっと私の目を捉えたまま放さない。
さすが、よくわからない集団のトップなだけある。目つきの鋭さでは多分誰にも負けないはず。
でも先輩はしばらく私が黙っていると、何かを思い出したように口を開いた。
「あぁ、この前の」
「…あ、はい」
この前の、というのが何を表しているのかは曖昧だったけれど、きっとあのいじめのことだと思ったから返事をした。
先輩は私をつま先から頭まで舐めるように観察すると、目線をふいっと空に移した。
「あの後は?なんかされたか」
「や…特には、まだ」
「あっそ」
先輩が、私の横にやって来て同じように体を手すりに預けた。
近くで見ると、髪の毛から少し見えている耳に銀色のピアスが2つ付けてあることがわかった。
うーん…。札付きの不良って感じ。
やっぱり私には、かなわないひとなんだと思う。
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