03
この人も二階堂先輩のファンのひとりだろうか。
私は引きずられながら、教室とは離れた非常階段の踊り場まで連れて行かれた。
そういえばココ、一昨日やられた場所と一緒だ。
そこまで来ると、彼女は私の手首を解放してこちらを向いた。
どこに仲間が隠れているんだろう。もしかして、よくわからないけど、タイマンってやつ…?
「八尋さん」
「…はい」
「二階堂に告られたらしいね」
「………、」
「しかも全部ふったんだって?」
「………」
「すっごい有名だよ」
「すみません…」
だからあなたは誰なんですか?
そんなこと聞けない。
1日2回やられるのは、今までで初めてだ。
しかもこんな怖そうな、ギャルともちょっと違う人。
今回は本当にぶん殴られるかもしれない。
「安藤が人助けしたのがあの二階堂振り続けてる女だって聞いたから、どんな子なのか見てみたいと思って!」
「…、」
安藤。
さっきの?
彼女はあっけらかんと笑って、私の顔をまじまじと観察する。
思わず顔をそむけてしまった。
「へー。噂通りかわいいねぇ。で、なんで二階堂振ったの?」
「……」
この人、私をいじめる気はないんだろうか。
「私も二階堂の猫っ毛なところが嫌いだけどさー」
「……はぁ」
「あんたもそこが嫌いなの?」
「や、違い、ます…」
「え?じゃあどこどこ?」
それとも私を安心させて、不意打ちする気なんだろうか。
「あ。安心して!私あんたのこといじめたりしないから」
「…ほんとですか?」
「うん!私はただ、見物に来ただけ!でも教室でこんな話したら嫌だろうなって思ってここまで連れてきたの」
彼女はニコニコと、私に綺麗な歯並びを見せて微笑んだ。
多分、この笑顔に嘘はない……と思う。
私は正直に、二階堂先輩のことを話した。
彼女は「そんな理由ねー」と納得した様子で、私の肩をばしばしと叩いた。
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