02
クラスでは、私に話しかけてくる人なんていない。
私が壁を作っているからだということはわかっている。
極度の人見知りなのだ。いまさらどうしようもない。
だから、アンドウさんのことを知るすべもなかった。
今日も存在を消して、授業中は黙々と板書をして、1日を終える。
二階堂先輩のことでの呼び出しが始まってからは、ますます自分という存在を消してしまいたくなった。
1日が無事に終わりますように。
毎日、そればかりを祈って。
「八尋さんってどの子?」
それなのに、休み時間。
次の授業の準備をしていた私の心臓は、知らない人の声で、衝撃で止まってしまうかと思うほどに跳ねた。
また呼び出しか…。
私は、俯いて気付かないふりをする。
にわかに教室内がざわついて、それでも知らないふりをする。
…怖いよ、
「八尋さん?」
誰か、は私の目の前までやって来た。
声は女性のもの。目の前にチラリと見えるスカートは異常に短い。
「いま時間ある?」
「これから、授業、で…」
「ちょっとでいいから」
ちょっとでいい。
呼び出しのとき、よく使われる言葉。
本当にちょっとで済んだことなんて1度もないけど。
私はまだ、顔を上げられずにいた。
「ちょっと来て」
突然腕を掴まれて、イスから引きずり落とされる。
大きな音に、クラス全員の視線が私たちに降り注がれた。
やっとその人の顔を見ると、ムラサキがかった赤のような髪色をした女の人だった。
…こんな人知らない。
[ 8/51 ][*prev] [next#]
[mokuji]
[しおりを挟む]