02



クラスでは、私に話しかけてくる人なんていない。

私が壁を作っているからだということはわかっている。

極度の人見知りなのだ。いまさらどうしようもない。

だから、アンドウさんのことを知るすべもなかった。



今日も存在を消して、授業中は黙々と板書をして、1日を終える。

二階堂先輩のことでの呼び出しが始まってからは、ますます自分という存在を消してしまいたくなった。

1日が無事に終わりますように。

毎日、そればかりを祈って。






「八尋さんってどの子?」




それなのに、休み時間。

次の授業の準備をしていた私の心臓は、知らない人の声で、衝撃で止まってしまうかと思うほどに跳ねた。

また呼び出しか…。



私は、俯いて気付かないふりをする。

にわかに教室内がざわついて、それでも知らないふりをする。



…怖いよ、




「八尋さん?」



誰か、は私の目の前までやって来た。

声は女性のもの。目の前にチラリと見えるスカートは異常に短い。




「いま時間ある?」

「これから、授業、で…」

「ちょっとでいいから」




ちょっとでいい。

呼び出しのとき、よく使われる言葉。

本当にちょっとで済んだことなんて1度もないけど。


私はまだ、顔を上げられずにいた。




「ちょっと来て」




突然腕を掴まれて、イスから引きずり落とされる。

大きな音に、クラス全員の視線が私たちに降り注がれた。


やっとその人の顔を見ると、ムラサキがかった赤のような髪色をした女の人だった。

…こんな人知らない。




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