04
「じゃ、用事それだけだから!」彼女はそのまま去ろうとする。
本当に何もしないつもりなんだ…。
じっとその姿を見ていて、ふと思い出した。「安藤が人助け…」という言葉。
「あの…!」
「んー?」
「安藤さんと、お知り合いですか…?」
「うん!同じクラスだよ」
「安藤さんって、どんな方なんですか?私、助けていただいたのに、お礼もきちんとできなくて…名字しか知らないし、」
彼女は大げさにこちらを振り向く。
そしてニコニコしたまま「言葉遣い綺麗ねー」と、私の頭を撫でた。
「安藤竜輝。3年6組。私と二階堂と同じクラス!」
「そうなんですか…」
「で、安藤は族っていうか…そういうグループの総長なんだよ」
「…っえ!」
「知らない?爽神会。ちなみに私はそこの副総長の彼女なのー」
聞いてないけどね、とかいうツッコミをしている場合ではない。
ソウシンカイ?
もしかしてこの前、地元のニュースでやってた迷惑行為を繰り返してるっていう不良集団のこと…?
「……ヤクザ」
「ヤクザじゃないよー。ただの高校生たち!だからみんな高校卒業したら足洗うんだよ」
「へぇ…」
「今、ちょっと弾けちゃってるだけ!」
だからこの人、こんなに髪が赤いのか…。
今弾けちゃってて、ちゃんと社会に出ていけるのか疑問だけど。
私はとりあえず、彼女に微笑んでおいた。
絶対に敵にはしたくない。
「よかったねー安藤味方につけたら、もう怖いもんなしだよ」
「味方だなんて…そんな」
「安藤って人助けたりあんまりしないから、ラッキーだったね!」
「はぁ、ありがとうございます…」
先輩は遠くで聞こえるチャイムの音を聞いて、慌てて階段を駆け上がる。
そして「またねー!」と手を振った。
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