04
結局、パーカーとキーケースを買って、小泉さんは満足そうにしていた。
そして腹が減っていた俺は、「里垣なんかおごるよ」という言葉に、甘えることにした。
2人で入ったのは、あのケーキ屋。
俺の好きなマカロンケーキがあるとこ。
店内のカフェスペースでケーキを食べるのは初めてだった。女と一緒なら、きちんと空間に馴染めるんだな。
「里垣なんにする?」
「………じゃあ、チーズケーキ」
「ふつーだね」
でも、小泉さんの前ではさすがに、いちごのマカロンケーキ!とは言えなかった。
恥ずかしすぎる。
俺が自分をさらけ出せるのは、清香の前だけだ。
チーズケーキとブラックコーヒー。
メンズって感じだろ。
やっぱ美味いなぁ、と味わっているときに。販売スペースから、聞き慣れた声がした。
「ショコラケーキと、いちごのマカロンケーキくださーい」
ショコラ。
マカロン。
…まさか。
「てか里垣さぁ」
「…っ、バッカ!うるせぇよ!」
「はぁ?誰に向かって口きいてんの」
思わず小泉さんにタメ口をきいてしまって、慌てて顔の前で手の平を合わせる俺。
彼女は不機嫌そうに眉間にしわを寄せてこちらを睨んでいる。瀬戸同様、怒らせると怖い。
そんなことよりも、俺たちの声に、販売スペースにいた女がこちらを振り向いた。
………終わった。
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