03
俺と小泉さんは、普通の友達感覚で俺が高校1年のときから仲がよかった。
小泉さんは俺がくすねた屋上の鍵を、よく借りに来ていた。授業をサボるときにはいつも屋上にいたらしい。
たまに俺も一緒にふけていた。
瀬戸と小泉さんが出会ったのも、俺が彼女に鍵を貸していたときで。俺が居るかも、と屋上に足を運んだらしい瀬戸が、彼女を見かけて一目惚れしたそうだ。
それが、小泉さんが3年、俺らが2年のとき。
そんな小泉さんから、突然連絡がきた。
瀬戸の誕生日プレゼントを、一緒に選んでほしいという頼みだった。
瀬戸は高校を卒業して、地元の企業で働いている。小泉さんは大学2年生だ。
瀬戸なんかの誕生日プレゼントを選ぶのは癪に障ったけど、小泉さんの頼みなら仕方ない。一応、先輩だから。
大学が終わったあと、2人で買い物に行くことにした。
「あいつ何好きかな?」
「さぁー…?シンプルより派手好きな感じしますよね」
「そうね。頭ん中が散らかってるもんね」
「ですよね」
小泉さんは洋服を何枚か手に取ると、俺の体にぴたりと合わせてきた。
少し首をよじる。恥ずかしいだろ。
「ちょっと動くな里垣!」
「だって…」
「今あんたの顔とあいつの顔入れ替えて想像中だから」
「……………」
先輩は完全に我が道を行くタイプだ。
瀬戸もそんな奴だけど、ふたりは本当に上手くいっているんだろうか。衝突しそう。
でもそういえば瀬戸は、「先輩の強がってるくせに実は弱くて健気でかわいいとこが最高に好きなんだよねー」と幸せそうに語っていた。
まぁ、上手くいってんだろうな。
「これあいつの好きなブランドだ」
「へぇー」
「カラフルだよね」
「ビビッドっすね」
小泉さんは俺をマネキン代わりにして、キャップからスニーカーまで、ありとあらゆる試着をさせた。
そして散々付き合わせた挙げ句に
「やっぱ、里垣とあいつは違うわ!」
と、あっけらかんと笑った。
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