07
清香は俺に対面したまま、映画のあれやこれを語り出して。
キャメロンだかキャラメルだかわからない女優の演技を絶賛していた。
だから知らないっつーの。
「今日どうする?一緒にメシする?」
「うん。そうする」
「じゃあお前作れ」
「え!また急だなぁ…」
困ったように笑う清香が、好きだ。
困ったようで本当は喜んでるのが見え見えなところが。
いまだに黒髪のストレートを保ってくれているいじらしさも、好きだな。
「…清香、」
「っ、ぎゃ!」
目の前の清香を抱きすくめて、そのままカーペットに押し倒す。
ふわりと清香のスカートがなびいて、髪の毛からはいい香りがした。
俺に組み敷かれた清香は目を白黒させて、何度も瞬きをする。
黒髪が床に散らばって、それもやっぱり綺麗だと思った。
「やっぱ、メシの前に清香食べるわ」
「ちょと、え、なに…!」
俺と清香は、まだそこまで進んでいない。
まだ、キス止まり。
だからこれだけ驚くのも無理はない。
清香の首筋に唇を這わすと、清香はグーに握った両手を胸の前でクロスさせて硬直した。
「…嘘に決まってんだろ」
「へ…?」
「ケーキ食お、ケーキ」
「…あ、うん」
俺が上から離れると、清香はやっと呼吸を取り戻した。
はぁはぁと、何もやってないのに息を上げて。
そんな姿がかわいいから、ちょっとだけ、マジで食ってやろうかと思ってしまった。
「次はないと思えよ」
清香が来る、はじめての俺の家。
ひきつった清香の顔は、すごくおもしろかった。
2011/03/27
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