05
映画のDVDを見せると、清香はものすごく喜んだ。
どんな話かは知らないけど、どうもラブストーリーくさい。
洋画に良くある、キャリアウーマンが恋してどうこう…ってやつだ。
俺、こういう映画よりもホラーとかB級邦画が好きなんだよね。まぁいいけど。
…案の定、映画開始10分で、既に飽きた。
でも俺の前の頭は微動だにせず、食い入るようにテレビを見つめている。
時折笑って……さっきまであんなに俺の膝の上を嫌がっていたくせに、もう今は俺が後ろに居ることすら忘れていそうだ。
「なぁー」
「え?びっくりしたー。なに?」
「膝大丈夫?」
「うん」
「痛いだろ」
「んーん」
「痛いよ」
「大丈夫」
暇だ。
清香は俺のしつこい質問攻めも全て適当にかわして、映画を見続ける。
仕方がないからそこらへんに散らばっていたものの中から、大きめの絆創膏を見つけて、後ろから清香の膝にぺたりと貼った。
「あ、ありがと」
それだけかい。
好きな映画探してきて、学校まで迎えに行って、何分も待って、ケーキ用意して、膝をイス代わりに貸してやって、けがの手当てをしてやって…
なんか、俺ばっかりが尽くしてない?
胸くそ悪ぃな。
「…っ、う、」
「え?」
「ひっ…、うぅぅ…」
「清香、どした?」
突然清香が泣いた。
俺の苛立ちが伝わってしまったのかと、後ろから身を乗り出して慌てて顔を覗きこむ。
でも彼女はそんな俺よりもテレビの画面を凝視して、ぼろぼろと涙を流していた。
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