04
清香は俺の家に入るなり、ぐるんぐるんと家中を見まわした。
あんまり見んなと言うけど、全く言うことを聞かない。
「すごい!雑貨屋さんみたい!」
「おふくろの趣味」
「かわいいお家ー」
「俺の部屋2階。あがっとけ」
俺は清香を階段の下に連れて行く。
そして自分はそのままキッチンへ向かった。
そういえば、高校時代に2人で食べたケーキ屋のケーキがあったはず。
……部屋に入ると清香は部屋の真ん中で突っ立っていた。
「なにしてんの」
「や、勝手に座るのも…、と思って」
俺はケーキの箱をテーブルに置いて、クッションの上にどかりと座る。
清香はそんな俺をぼんやり見つめたまま、まだおたおたとしていた。
「清香」
「はい…?」
「ここ、来る?」
清香を見上げる。
指をさすのは、あぐらをかいた俺の膝の上。
清香の顔は一瞬にしてかあっと真っ赤になった。
すごい。理科の実験みたいだ。
「ほら。おいで」
俺の目の前にぶら下がっていた手首を掴んでひっぱると、さっきアスファルトに転んだ時のように、清香は派手に這いつくばった。
そのまま両脇を抱えて俺の膝の上に清香を座らせる。
清香は終始なにも言わないまま。なんだか一段と小さく見えた。
…ぎゅう。
そう、音がしそうなくらいに後ろから抱きしめる。
そして清香の頭に自分の顎を置いた。
「清香ちゃん」
「な、なんでしょう…」
「好きだよ」
「…こわい」
「なんだそれ」
お前も俺のこと好きなくせに。
付き合い始めてから、俺の方がよく「好き」だと言っている気がしなくもない。
うーん。癪に障る。
でも、好きなもんは好きだ。仕方ない。
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