03



その後、式典があったけれど、私の体調の悪さはMAXに到達していた。

頭がぐらぐらして、耳鳴りが始まった。

来賓挨拶のたびにいちいち立って礼をしなければならないのが苦痛で、きっと傍から見てもふらふらしていたと思う。

でも見ず知らずの私を助けてくれる人はなかなかいない。…これは自力でどうにかするしかない。


ハンカチで冷や汗を拭っていると、いきなりうわばきをぱこんと蹴られた。

びっくりして顔を上げると、隣に座っていたらしい里垣くんが私を睨みつけていた。

…怖い。隣だなんてしらなかった。



「どうかした?」

「お前具合悪いの?」

「ちょっと、貧血…」

「まじか」



里垣くんは、きょろきょろ辺りを見回して担任の先生に小さく手を挙げて合図した。

先生がこちらへ向かってやって来る。



「先生、この人具合悪そうなんで保健室に連れて行きます。俺が」

「いや、お前はいい。先生と一緒に行こう」

「いーや!俺が連れていきます。先生よりも俺のほうがでかいから」



なんだその理由。たしかに先生はもやしみたいで力無さそうだけど。

先生もそれに納得してしまったのか、里垣くんに保健室の場所を伝えて「頼むね」なんて言いだした。


でももう限界点が見えてきた私には、どっちが保健室に連れて行こうがどうだってよかった。

早くこの閉め切られた空間から解放してほしい。で、なにか甘いものでも飲ませてほしい。



「おい。行くぞ」



里垣くんの言葉に、必死で頷く。

彼は私の体を支えて立ち上がらせてくれた。

同じ年でも男の人ってこんなに逞しいんだ、って、そのとき初めて知った。



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