02
高校の入学式の日。
朝、緊張で何も食べられなかった私は軽く貧血気味だった。
もともと色の白い自覚があるけど、その日はそのせいでもっと顔色が白かったんだと思う。
「紙みたい」
「はい?」
「紙みたいに、真っ白」
教室の席に着いた途端、斜め前に座っていた男子にそう言われた。
雪とかうさぎとかは言われたことがあるけど、紙っていう発想は初めてだ。
「どうも…ありがとう」
「別に褒めてないけど」
「あ、すみません」
彼はふん、とそっぽを向いた。
入学式当日にも関わらず、その辺の男子とは既に意気投合しているようで、わいわいと騒いでいる。
彼が、里垣由和だった。
ぶっきらぼうで、嫌な人だなぁと思った。
目つきも怖いし、完全にヤンキーのフレーバーが漂っている。
絶対どこのクラスにも1人はいる感じの、目立つタイプ。
このチョイ悪加減が、きっと女子にはそうとうモテるんだろうな。
顔もそこそこかっこいいし。
「…何見てんだよ」
「え?」
「お前さっきからなんでずっと俺見てんの?俺のこと好きになった?」
「は?馬鹿なこと言わないでください」
「好きになってもいいよ。でも残念ながら俺はお前みたいな子タイプじゃないわ」
そんなにじっと見ていたつもりもなかったけど、この人的には見られていると思ったんだろう。
彼はとんでもなく失礼な言葉を寄越して、にやっと笑うとまた背を向けた。
私はいわゆる普通の子。
どちらかというと地味なのかもしれない。
人より感情の振り幅が小さくて、たいしたことでは腹も立たない。
だからこの人のセリフに苛立ったりはしなかったけれど。
でも、関わりたくないなって思った。
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